Presentation Information
[P-5]Analysis of the behavior in basal seat mucosa under mandibular complete denture
- A thickness of the mucosa -
*Yuki Taniuchi1, Kenji Aoki1, Natsumi Obinata1, Hiroshi Watanabe2, Koichiro Arai3, Mineyo Sone1, Kazuhiko Okamoto1 (1. Division of Removable Prosthodontics, Department of Restorative and Biomaterials Sciences, Meikai University School of Dentistry, 2. Techspire Co., Ltd., 3. Hexagon D&E Systems Business Unit Technical)
【目的】
全部床義歯装着者において,義歯の機械的刺激で生じる顎堤粘膜の疼痛は,咀嚼機能を低下させる要因の1つである.しかしながら,全部床義歯において,疼痛発症に繋がる義歯床下粘膜の挙動に関する報告は少ない.
我々は,(公社)日本補綴歯科学会第133回学術大会において,下顎全部床義歯における義歯床下粘膜の挙動について三次元有限要素解析を行った結果,義歯床下粘膜の厚径を均一に設定した条件で,支持領域とされる頰棚部に応力やひずみが大きく発現していたことを報告した.一方,口腔内の構成要素や性状は複雑であり,モデルの各設定条件について検証を重ねる必要があると考えられた.
そこで今回は,義歯床下粘膜の厚径を解剖学的に近似させたモデルを構築し,解析および検討を行った.
【方法】
解析にあたり,前回報告した下顎全部床義歯モデル(以下,粘膜均一モデルとする)を元に,論文値1)を参考に解剖学的に近似させたモデル(以後,解剖モデルとする)を構築した.モデルは義歯床,義歯床下粘膜部,人工歯および歯槽骨から構成され,荷重は下顎第一小臼歯から下顎第二大臼歯の人工歯に対して,垂直方向から50~200 Nを加えた.また,義歯床と義歯床下粘膜との界面については,静止摩擦係数0.3を設定し,拘束条件は下顎骨基底部を全方向に拘束した.解析は,非線形構造解析ソルバー(Marc 2023.4,Hexagon,Sweden)を用いて非線形解析を行った(図1).
解析結果は義歯床下粘膜に発現する応力をvon Mises相当応力,最大主応力,また,ひずみについては,最大主全ひずみをポストプロセッサにより可視化して検討を行った.
【結果と考察】
荷重条件に関わらず,頰棚部に高い応力・ひずみの分布が認められ,同周辺部で最大値が発現していた(図2).これは,成書における支持領域と一致し,また,粘膜厚径を2.0 mm均一とした粘膜均一モデルの結果と概ね近似していた.これらのことから,下顎全部床義歯における義歯床下粘膜挙動において,粘膜厚径による影響は少ないことが示唆された.
【参考文献】
1) 寺倉 健.顎粘膜厚径に関する研究―無歯顎補綴における診断への可能性について―.補綴誌 1988;32:546-560.
全部床義歯装着者において,義歯の機械的刺激で生じる顎堤粘膜の疼痛は,咀嚼機能を低下させる要因の1つである.しかしながら,全部床義歯において,疼痛発症に繋がる義歯床下粘膜の挙動に関する報告は少ない.
我々は,(公社)日本補綴歯科学会第133回学術大会において,下顎全部床義歯における義歯床下粘膜の挙動について三次元有限要素解析を行った結果,義歯床下粘膜の厚径を均一に設定した条件で,支持領域とされる頰棚部に応力やひずみが大きく発現していたことを報告した.一方,口腔内の構成要素や性状は複雑であり,モデルの各設定条件について検証を重ねる必要があると考えられた.
そこで今回は,義歯床下粘膜の厚径を解剖学的に近似させたモデルを構築し,解析および検討を行った.
【方法】
解析にあたり,前回報告した下顎全部床義歯モデル(以下,粘膜均一モデルとする)を元に,論文値1)を参考に解剖学的に近似させたモデル(以後,解剖モデルとする)を構築した.モデルは義歯床,義歯床下粘膜部,人工歯および歯槽骨から構成され,荷重は下顎第一小臼歯から下顎第二大臼歯の人工歯に対して,垂直方向から50~200 Nを加えた.また,義歯床と義歯床下粘膜との界面については,静止摩擦係数0.3を設定し,拘束条件は下顎骨基底部を全方向に拘束した.解析は,非線形構造解析ソルバー(Marc 2023.4,Hexagon,Sweden)を用いて非線形解析を行った(図1).
解析結果は義歯床下粘膜に発現する応力をvon Mises相当応力,最大主応力,また,ひずみについては,最大主全ひずみをポストプロセッサにより可視化して検討を行った.
【結果と考察】
荷重条件に関わらず,頰棚部に高い応力・ひずみの分布が認められ,同周辺部で最大値が発現していた(図2).これは,成書における支持領域と一致し,また,粘膜厚径を2.0 mm均一とした粘膜均一モデルの結果と概ね近似していた.これらのことから,下顎全部床義歯における義歯床下粘膜挙動において,粘膜厚径による影響は少ないことが示唆された.
【参考文献】
1) 寺倉 健.顎粘膜厚径に関する研究―無歯顎補綴における診断への可能性について―.補綴誌 1988;32:546-560.