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[P-140]Long-term prognosis of a patient with cerebrovascular disease treated using a removable electroformed implant superstructure.

*Shoji Hayashi1,2, Hiroichiro Hirai1, Yuya Yoshida1, Yoshiko Onuki1, Tadasu Haketa1, Marie Kataoka1, Rena Masu1, Yuri Akiyama1, Daisuke Higuchi1 (1. Matsumoto Dental University, 2. Kanagawa Dental University)
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【緒言】
 脳血管障害後遺症では片麻痺や,四肢麻痺,咀嚼・摂食・嚥下障害,さらに著しい体重減少などが生じることが報告されている.今回,咀嚼困難を主訴とする脳血管障害後遺症患者に対し,可撤性の電鋳インプラント上部構造を装着した結果,長期にわたる良好な審美的,機能的な回復を得ることができたので報告する.
【症例の概要・治療内容】
 患者は69歳女性.2008年4月,近医にて下顎残存歯を7歯抜去し,同5月に上下顎に全部床義歯を装着し調整を行ったが,義歯不適合による咀嚼障害が改善せず,紹介により神奈川歯科大学附属横浜クリニックインプラント科に来院した.既往歴に脳血管障害があり,後遺症として左半身麻痺を認めた.当院においても全部床義歯の調整を行ったが,患者の満足が得られず,患者はより安定しかつ片手で着脱可能な補綴装置を希望したため,インプラントオーバーデンチャーによる補綴歯科治療を計画した.2009年2月,上顎に7本のXiVEインプラント(φ3.4×11mm, 13mm)を埋入,2009年4月,下顎には4本のXiVEインプラント(φ3.4×11mm, 13mm)を埋入した.2010年1月,プロビジョナルレストレーションを装着し,2011年5月,上顎には電鋳テレスコープ上部構造を,下顎にはバーアタッチメントを併用した電鋳インプラント上部構造を装着した.
【経過ならびに考察】
 2020年10月,下顎中間構造体の固定用スクリューに緩みを認めたため,再度締結,2023年10月には同部位のスクリューが破折したため交換した.2024年12月(補綴装置装着後13年7ヶ月),インプラント周囲粘膜には炎症等はなく,ペリオテスト値およびエックス線写真において異常所見は認められなかった.また,山本式咀嚼能率表とVisual Analogue Schaleによる主観的評価において患者の機能および審美に対する満足感を確認することができた.本症例のような脳血管障害後遺症患者に対しては,患者の個々の状態や巧緻性に配慮した上部構造設計だけでなく,生体追従性を考慮した治療計画の立案により,良好な長期予後が得られる可能性が示唆された.なお,本発表は患者の同意を得て行っている.
【参考文献】
1)林 昌二,杉山秀太,志村公治郎ほか.顎骨再建後に電鋳テレスコープ義歯を用いた補綴症例.日口腔インプラント誌,2020;51:227-234.