Presentation Information

[P-141]Construction of abutment tooth shape by direct method using preoperative digital simulation.

*Yuichiro Yamaguchi1, Yu Takaesu1, Kota Isshi2, Naoyuki Kaga1, Nobutomo Maehara1, Takashi Matuura1 (1. Section of Fixed Prosthodontics, Department of Oral Rehabilitation, Fukuoka Dental College, 2. Fukuoka Dental College Medical Dental General Hospital Central Dental Laboratory)
【緒言】
 近年の補綴歯科治療では,少ない治療回数や審美性の高さからレジン系材料を用いた直接法による支台築造が頻繁に行われている.しかし,間接法と比較して最終補綴物に適した支台歯形態を意図的に付与するのが困難な症例も存在する1).そこで今回,前歯部にクラウンを製作する上で最適な支台歯形態を直接法で付与するためにデジタルシミュレーションを利用した症例について報告する.
【症例の概要・治療内容】
 患者は33歳の女性.上顎左側中切歯の感染根管処置後の歯冠修復依頼で他科から紹介来院した.当該歯は歯冠側の残存歯質が歯肉同縁に位置しておりフェルールが不足していた.検査の結果,外科的歯冠長延長術でフェルール確保後に直接法で支台築造を行い,モノリシックジルコニアクラウン(MZC)製作を行うこととした.歯冠長延長後,粘膜の治癒を待ち口腔内スキャナーで光学印象を行った.データをCADソフトウェアに入力し,ラボサイドで上顎左側中切歯の最終的な歯冠形態とMZC製作に必要なクリアランスの数値を入力して支台歯を設計し術前のシミュレーションデータとした.これらを口腔内で再現するための支台築造用コアとプロビジョナルレストレーション(PR)を製作した.窩洞形成後,口腔内に築造用コアを装着し,コア外部の頓路から内部にレジンを填入し築造を行った.築造と同日に概形成,PRの装着を行った.最終形成後に歯肉縁下マージン部のみ局所的な印象採得を追加で行い2nd PRを製作,装着した.審美性,咬合,清掃性に問題が無いことを確認した後,術前に設計した歯冠形態をもとにMZCを製作,装着した.
【経過ならびに考察】
 現在,装着したMZCに機能・審美的な問題は認めず経過良好である.本症例で行った術式は,術前のデジタルシミュレーションを用いることで最終補綴物に適した支台歯形態を意図的かつ簡便に直接法で構築することができた.以上の点からデジタルシミュレーションを利用した直接法による支台築造は臨床的に有用と考える.(発表に際して患者の同意を得た.)
【参考文献】
1) 中川善治,小川 匠.Ⅳ 支台築造.第6版クラウンブリッジ補綴学,医歯薬出版;2021:126-133.