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[P-148]A case of occlusal reconstruction based on jaw movement data in a patient with significant skeletal asymmetry of the mandible

*Norihiro Sugimoto1,2, Shuji Shigemoto2, Hisaki Ogihara2, Yuko Shigeta2, Rio Hirabayashi2, Mitsuyoshi Tsumita2, Keita Sasaki2, Katsutoshi Matsumoto2,3, Takumi Ogawa2 (1. Kansai Branch, 2. Department of Fixed Prosthodontics, Tsurumi University School of Dental Medicine, 3. Tohoku & Hokkaido Branch)
【緒言】
 下顎骨体や顎関節の形態の著しい左右差を伴う症例において咬合再構成を行う場合,適切な咬合平面を新たに設定する必要があるが,そのための客観的な機能的評価基準は存在しない.今回は,患者の形態と顎運動情報に基づいて新たな咬合平面を設定して咬合再構成することで良好な結果を得た症例について報告する.
【症例の概要・治療内容】
 患者は64歳男性.左側臼歯部の疼痛による咀嚼困難を主訴に来院した.重度慢性歯周炎による残存歯の疼痛,上下顎前歯叢生を伴う上顎前突,左側顎関節変形症,顎偏位を認めた.顎偏位に対して下顎を適正な顎位に誘導した.顎運動情報を活用し,矯正治療とインプラント補綴治療を併用した咬合再構成を行った.
【経過ならびに考察】
 骨関節隙に基づいて顎偏位を評価1,2)した結果,本症例の関節窩に対する下顎頭の位置は右側ともに後上方に偏位していたため下顎を前下方に誘導した.術前の画像診断から下顎骨体と顎関節に形態的左右非対称を認め,咬合平面は顔貌に対して左上がりに傾斜していた.下顎孔やその近傍にあるXiポイントは,咬合平面決定の形態的指標であるが,本症例の左右の下顎孔およびXiポイントをとおる直線は左上がりに傾斜していた.顎運動情報から得られる最小運動軸は,下顎孔付近を通り咬合平面決定の機能的指標となり得る3).本症例の最小運動軸は,左上がりに傾斜していた.形態的,機能的な評価から,本症例にとっては左上がりの咬合平面が適正であると診断し補綴装置の設計に反映した(図).本症例で形態的指標だけでなく機能的指標の左右非対称を認めたことは,形態的非対称に対して機能的に適応した結果と考えられる.このような症例に対しては,盲目的に形態的左右対称を目指すのではなく患者個々の形態情報に加えて機能情報を評価することで生体に調和した補綴設計が可能になると考えられる.
【参考文献】
1) 寿谷 一.顎関節機能障害の診断と治療指針(上).補綴臨床 1997;30:327‒336.
2) 寿谷 一.顎関節機能障害の診断と治療指針(下).補綴臨床 1997;30:501‒514.
3) Ito T, Shigemoto S, Shigeta Y et al. Proposal of quantitative method for determining occlusal plane.J Jpn Soc Stomatognath Funct 2019; 26: 1‒17.