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[P-152]A case of using a treatment denture to improve mandibular position and oral function for malocclusion

*Yutaka Kurata1,2, Asako Suzuki2, Shunsuke Nagata3, Akiko Morita4 (1. Higashi-Kanto Branch, 2. Department of Removable Prosthodontics and Geriatric Oral Health, Nihon University School of Dentistry at Matsudo, 3. Department of Dental Biomaterials,Nihon University School of Dentistry at Matsudo, 4. Tokyo Branch)
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【緒言】
 多数歯欠損症例における咬合再構成では歯牙や歯周組織の病態に対する対応のみならず,適切な咬頭嵌合位の回復のためには垂直的水平的顎位(下顎位)の偏位などへの対応も必要となることがある.歯牙欠損が進行する時間軸の中で咬頭嵌合位や咀嚼部位の変化により,下顎位の偏位が引き起こされる.今回,歯牙の欠損と歯周疾患の重症化に伴う下顎位偏位症例に対し,均等な咬合接触の付与を目的とした治療用義歯を装着しオーラルリハビリテーションを施行したことにより良好な結果が得られたので報告する.
【症例の概要・治療内容】
 初診時61歳女性.35咬合痛を主訴として来院した.上顎には全部床義歯を装着,下顎には両側遊離端欠損を含む欠損歯列であるがクラウン・ブリッジで歯冠補綴されていた.顔貌所見より咬合高径の低下及び下顎位の水平的偏位を認めた.下顎残存歯の動揺も認め,歯周治療および残存歯に対する歯冠補綴装置の装着,可撤式有床義歯による咬合再構成を施行した.
【経過ならびに考察】
 歯周基本治療,歯内療法,保存不可能歯の抜歯を施行,保存予定歯には暫間被覆冠を装着した.下顎位の偏位にはスタビリゼーションアプライアンスによる治療が選択1,2)される症例もあることを踏まえ,欠損部には下顎位の偏位を改善する目的で,均等な咬合接触の付与を目的とした治療用義歯を装着し下顎位の変化を観察した.患者の下顎位は右側前方への位置変化が起こった.この位置で歯冠補綴装置及び上下顎可撤式有床義歯を製作・装着した.現在,最終補綴装置装着より約9年経過しているが良好な経過をたどっている.咬頭嵌合位の評価を行い,咬合高径,下顎位の問題についてその解決のために治療用義歯を活用したことにより患者の下顎位を適正な状態に回復することができた.治療修了から約9年経過の中,義歯内面の修正を必要とせず,咬頭嵌合位の変化も安定している.
【参考文献】
1) 渡辺誠,古屋良一,山下敦ほか.顎関節症(Temporomandibular Disorders)の診断と治療 -TMDと咬合-.日補綴会誌 1997; 41: 1‒43.
2) 小林義典,鷹橋雅幸,横山正起.治療義歯による不正な咀嚼機能の是正処置-右側下顎頭の後方偏位と左側下顎頭の前方偏位を呈する無歯顎症例-.歯学 2000;88(秋季特集号):413-7.