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[P-30]Effects of static friction coefficients on the behavior analysis of basal seat mucosa under mandibular complete denture with finite element method

*Kenji Aoki1, Yuki Taniuchi1, Natsumi Obinata1, Minoru Miyata1, Mineyo Sone1, Kazuhiko Okamoto1 (1. Division of Removable Prosthodontics, Department of Restorative and Biomaterials Sciences, Meikai University School of Dentistry)
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【目的】
 全部床義歯における義歯床下粘膜の挙動を把握することは,全部床義歯装着後の術後経過を推測する上で重要である.義歯床下粘膜における機械的刺激は粘膜病変の発症に関与しており,義歯床および床下粘膜の界面に生じる摩擦係数が義歯床下粘膜の挙動に影響を及ぼすことが報告されている1.しかしながら,機能時における,その挙動に関する報告は少ないのが現状である.
 そこで今回は,摩擦係数が義歯床下粘膜の挙動に及ぼす影響を検討する目的で,下顎全部床義歯解析モデルに対して有限要素法を用いて検討を行った.
【方法】
 解剖学的な粘膜の厚径を再現した下顎全部床義歯解析モデルの構築を行った.設定条件として,荷重は咬合平面に対して垂直方向から50~200 Nを下顎左右側第一小臼歯から第二大臼歯に荷重した.また,義歯床と床下粘膜との界面の静止摩擦係数は 0.1~0.3の0.1間隔で設定した.
 解析結果は,義歯床下粘膜に発現する応力をvon Mises相当応力,最大主応力,また,ひずみについては,最大主全ひずみ,さらに,義歯床下粘膜でのX(頰舌側方向),Y(近遠心側方向),Z(上下方向)方向の変位量についてポストプロセッサにより出力して検討を行った.
【結果と考察】
 最大応力について,von Mises相当応力および圧縮方向の最大主応力では,摩擦係数ならびに荷重量の増加にかかわらず,最大応力発現部位は頰棚部にみられた.また,圧縮方向の最大主全ひずみにおいても摩擦係数ならびに荷重量の増加にかかわらず,頰棚部に発現しており,同様な傾向が認められた.一方,変位量では,摩擦係数が増加するに従って,X,Y,Z方向で変位量が減少する傾向を認め,特にY方向で顕著であった(図1).
 以上のことから,義歯床下粘膜の摩擦係数の大きさはY方向への義歯床下粘膜の挙動に影響を及ぼすことが示唆された.
【参考文献】
1) Prinz JF, De Wijk RA, Huntjens L. Huntjens. Load dependency of the coefficient of friction of oral mucosa. Food Hydrocolloids 2007; 21: 402-408.