Presentation Information
[P-37]Effect of low-concentration ammonium hydrogen fluoride solution on the bond strength of glass ceramics
*Ayako Miura1,2, Yuya Komagata1, Yuki Nagamatsu1, Hiroshi Ikeda1, Chihiro Masaki2 (1. Kyusyu Dental University Division of Biomaterials, 2. Kyusyu Dental University Division of Oral Reconstruction and Rehabilitation)
【目的】
ガラスセラミックスの接着前処理には, フッ酸エッチングとシラン処理の併用がグローバルスタンダードとされている. しかし, フッ酸は高い毒性を持ち, 取り扱いには厳重な注意が必要であるため, 安全な代替エッチャントの開発が求められている. 先行研究では, 低毒性の5%フッ化水素アンモニウム(AHF)水溶液がフッ酸処理と同等のレジンセメント接着強さを発揮することを示した. 本研究ではさらに低濃度の1.5%AHF水溶液に硫酸水素アンモニウム(AHS)を添加したエッチャントを試作し, ガラスセラミックスに対するエッチング効果およびレジンセメント接着強さへの影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
蒸留水にAHFとAHSを溶解し, フッ素濃度が約1%の試作エッチャント(AHFA)を調製した. これを二ケイ酸リチウムガラス(e.max)および長石質陶材(Mark II)に滴下し, 120秒間保持した後, 水洗・超音波洗浄・乾燥させた. 処理後の試料表面は, SEM観察およびレーザー顕微鏡による表面粗さ測定で評価した. 接着試験では, AHFA処理後の試料にシラン処理を行い, デュアルキュア型レジンセメントを接着した. 接着試料は20,000回の熱サイクル試験後, せん断接着強さを測定した. 比較対照群は, エッチングなし(Cont), フッ酸処理,モノボンドエッチアンドプライム処理(MEP)とした. 統計処理は一元配置分散分析を行い, Tukey検定で比較した(p<0.05).
【結果と考察】
SEM観察では, e.maxとMark IIは共に, AHFA処理群でフッ酸と同様にシリカ層の溶解が確認され, Cont群およびMEP群と比較して有意に表面粗さが増加した. 接着強さは, Mark IIではAHFA群と対照群との間に有意差は認められなかった. 一方, e.maxでは, AHFA群の接着強さ(5.7 MPa)はフッ酸処理(9.3 MPa)には劣るものの, Cont群(試験前に全て脱離)およびMEP処理群(1.4 MPa)より有意に高かった. AHFAは, AHFとAHSの相乗効果によってシリカに対する反応性を向上させ, その結果, 比較的低濃度のフッ素でもガラスを効果的にエッチングできたと考えられる. 以上より, フッ化水素アンモニウムと硫酸水素アンモニウム混合水溶液(AHFA)は, 特に二ケイ酸リチウムガラスの接着前処理に有用であることが示唆された.
ガラスセラミックスの接着前処理には, フッ酸エッチングとシラン処理の併用がグローバルスタンダードとされている. しかし, フッ酸は高い毒性を持ち, 取り扱いには厳重な注意が必要であるため, 安全な代替エッチャントの開発が求められている. 先行研究では, 低毒性の5%フッ化水素アンモニウム(AHF)水溶液がフッ酸処理と同等のレジンセメント接着強さを発揮することを示した. 本研究ではさらに低濃度の1.5%AHF水溶液に硫酸水素アンモニウム(AHS)を添加したエッチャントを試作し, ガラスセラミックスに対するエッチング効果およびレジンセメント接着強さへの影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
蒸留水にAHFとAHSを溶解し, フッ素濃度が約1%の試作エッチャント(AHFA)を調製した. これを二ケイ酸リチウムガラス(e.max)および長石質陶材(Mark II)に滴下し, 120秒間保持した後, 水洗・超音波洗浄・乾燥させた. 処理後の試料表面は, SEM観察およびレーザー顕微鏡による表面粗さ測定で評価した. 接着試験では, AHFA処理後の試料にシラン処理を行い, デュアルキュア型レジンセメントを接着した. 接着試料は20,000回の熱サイクル試験後, せん断接着強さを測定した. 比較対照群は, エッチングなし(Cont), フッ酸処理,モノボンドエッチアンドプライム処理(MEP)とした. 統計処理は一元配置分散分析を行い, Tukey検定で比較した(p<0.05).
【結果と考察】
SEM観察では, e.maxとMark IIは共に, AHFA処理群でフッ酸と同様にシリカ層の溶解が確認され, Cont群およびMEP群と比較して有意に表面粗さが増加した. 接着強さは, Mark IIではAHFA群と対照群との間に有意差は認められなかった. 一方, e.maxでは, AHFA群の接着強さ(5.7 MPa)はフッ酸処理(9.3 MPa)には劣るものの, Cont群(試験前に全て脱離)およびMEP処理群(1.4 MPa)より有意に高かった. AHFAは, AHFとAHSの相乗効果によってシリカに対する反応性を向上させ, その結果, 比較的低濃度のフッ素でもガラスを効果的にエッチングできたと考えられる. 以上より, フッ化水素アンモニウムと硫酸水素アンモニウム混合水溶液(AHFA)は, 特に二ケイ酸リチウムガラスの接着前処理に有用であることが示唆された.