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[P-48]Comparative evaluation of thermal stress in restorative materials

*Kohei Komine1, Natsuko Murakami1, Toshiki Yamazaki1, Junichiro Wada1, Noriyuki Wakabayashi1 (1. Advanced Prosthodontics, Oral Health Sciences, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Institute of Science Tokyo)
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【目的】
 修復材料は固有の熱特性を有しており,飲食による口腔内の温度変化により修復物と支台歯の熱膨張に差が生じ,これが熱応力を引き起こす.繰り返される熱応力は修復物の破折やセメント破壊による脱離の原因となると考えられる.本研究では,異なる材料および厚みを持つ歯冠修復材料において,熱負荷により生じる熱応力を解析し,材料ごとの熱負荷リスクを明らかにすることを目的とした.
【方法】
 下顎右側第一大臼歯のメラミン歯を形成後スキャンし,クラウンの厚みを0.5,1.0,1.5mmに設定したクラウン,セメント層,支台歯の3Dモデルを作成した(Fig.1).有限要素解析ソフトウェア(ANSYS)を使用し,修復材料はジルコニア,金合金,硬質レジン, PEEK,セメント層にはレジンセメント,支台歯には象牙質の材料定数を用いた.初期温度は口腔内を想定した37℃とし,支台歯底面を37℃に固定,クラウンと支台歯外表面に5℃および60℃の温度変化を与えた際の温度分布を過渡伝熱解析により算出し,5秒経過時の温度分布を冷および熱負荷として,静的構造解析により第一主応力(S1)を算出し比較した.
【結果と考察】
 冷負荷時,クラウンおよびセメントのマージン付近にS1が集中した.クラウンに生じたS1の最大値は,ジルコニアが最も高く,次いで金合金,硬質レジン,PEEKの順であり,材料のヤング率の大小関係と一致した.一方,セメントに生じたS1の最大値は,PEEKが最も高く,次いで硬質レジン,金合金,ジルコニアの順であり,クラウンの熱膨張率の大小関係に一致する傾向を示した.
 一方,熱負荷時には,S1はクラウンやセメントのマージン部にほとんど集中しなかった.ジルコニアおよび金合金のクラウンでは,厚みの増加に伴いS1が減少したが,硬質レジンとPEEKでは厚みが増加しても応力値に大きな変化は認めなかった.本研究により,PEEKや硬質レジンのようにヤング率が低く熱膨張率が高い材料では,セメントにおいて応力が高く集中し,セメント破壊による脱離のリスクが高まる可能性が示唆された.また,ジルコニアや金合金ではクラウンの厚みの増加は熱応力を低減する傾向が見られたが,硬質レジンやPEEKでは厚みの影響を受けない傾向を示した.歯冠修復材料の熱応力を評価する際には,各材料の熱的および機械的特性を総合的に考慮する必要があることが示唆された.