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[P-81]The influence of sustained inflammatory cytokine stimulation on the immunoregulatory function of murine mesenchymal stem cells

*Naoya Matsunaga1, Kentaro Akiyama2, Ryuji Tgashira1, Kazuki Ito1, Takuo Kuboki1 (1. Department of Oral Rehabilitaion and Regenerative Medicine, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, 2. Department of Occlusal and Oral Functional Rehabilitation, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences)
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目的
 歯周病やインプラント周囲炎は,局所の炎症抑制が組織破壊の進行を防ぐ重要な要因とされる.一方持続的な炎症は,間葉系幹細胞(MSCs)の骨芽細胞分化能を低下させることが知られているが免疫調節能への影響は未解明である.特に,長期的な炎症刺激によりMSCsが「免疫調節疲弊」と呼ばれる状態に陥る可能性について,本研究はその発生メカニズムを解明し,難治性炎症性疾患の新規治療戦略の基盤を築くことを目的とする.
方法
 マウス(C57BL/6J,8週齢,雌)骨髄由来MSCsと炎症性マクロファージ(M1)を継続的に間接共培養し,MSCsの免疫調節遺伝子(Tgf-b, Hgf, Il-10, Fasl)や免疫チェックポイント遺伝子(Pd-1, Ctla-4, Pdl-1)の発現をリアルタイムPCRで解析した.In vivoでは,リポ多糖投与による慢性炎症モデルにてMSCsの抗炎症性サイトカイン(Tgf-b)および免疫チェックポイント因子(Pd-1)の陽性細胞割合を免疫染色で比較した.また,共培養中のMSCs培養液にTNF-a中和抗体やTNF-aを添加して,前述の遺伝子発現およびNF-kBシグナル(TraddIkka),アポトーシス関連遺伝子(Bax, Caspase3)の変化を検討した.
結果と考察
 M1との共培養により,MSCsの免疫調節遺伝子の発現は一時的に上昇したが,長時間の刺激により低下した.一方,免疫チェックポイント遺伝子は時間依存的に上昇した(図).また,In vivo慢性炎症モデルでも,Tgf-b陽性MSCsは減少し,Pd-1陽性MSCsが増加した.さらに,TNF-aを持続的に添加すると,NF-κBシグナルの持続的な活性化が認められた.一方,共培養中にTNF-a刺激をブロックすると,これら遺伝子群の変化が抑制される結果となった.加えて,TNF-a刺激除去後では免疫調節機能は完全には回復せず,アポトーシス関連遺伝子の発現が増加し,長期刺激がMSCsの細胞死を誘導する可能性が示された.これらの結果は,短期的な炎症刺激ではMSCsの免疫調節能を促進させるが,持続的な炎症刺激では「免疫調節疲弊」状態に移行し,機能低下や不可逆的変化を誘導することを示唆している.この知見は長期的な炎症を抑制することが,MSCsの免疫調節機能を維持し組織破壊抑制の新たな治療戦略の重要な基盤となると考えられる.