Presentation Information

[P-95]The state of feed changes GLP-1 and insulin secretion in healthy mice.

*Yuki Kan1, Hironobu Ishikawa1, Yoshifumi Toyosita1, Kenji Yokozeki1, Sari Takada1, Katsuya Kawanisi1, Furukawa Yuzo2, Koji Sakuma2, Hidero Terasawa3, Hisashi Koshino1 (1. Department of Oral Rehabilitation, School of Dentistry, Health Sciences University of Hokkaido, 2. Tohoku-Hokkaido Branch, 3. Higashi-kanto Branch)
PDF DownloadDownload PDF
【目的】
 耐糖能異常は2型糖尿病罹患の兆候であり,発症には肥満,食習慣等が挙げられる.咀嚼は食習慣の重要な要素である.咀嚼は栄養摂取行動の一部ではあるが,咀嚼が栄養吸収への種々の機能と関連することが報告されている.本研究では咀嚼動態の相違がインスリン分泌とインスリン分泌を増幅するGLP-1の分泌に与える影響について検討を行った.
【方法】
 実験動物には3週齢C57BL/6J系雄性マウス30匹を用いた.経口・経管両用栄養剤(エンシュアリキッド,株式会社明治)で飼育する群(非咀嚼群)と経口・経管両用栄養剤と同一の栄養成分の固形飼料で飼育する群(咀嚼群)を設定した.各々の飼料で12週間飼育し,飼育開始時と終了時に血液を採取し,ELISAを用いて活性型GLP-1濃度(株式会社免疫生物研究所)とインスリン濃度を測定した.
 統計処理はSPSSを用いてKruskal-Wallis検定で比較した後、Mann WhitneyのU検定を行い,Bonferroniの修正を行い,有意水準p < 0.05とした.本実験は北海道医療大学動物実験倫理委員会の承認を得て行った(承認番号21-49号).
【結果と考察】
 活性型GLP-1濃度において,4週齢と比較して咀嚼群が上昇しており(p < 0.05),咀嚼群が38.8 ± 8.7 pmol/l,非咀嚼群が27.4 ± 6.19 pmol/lとなり,咀嚼群が有意に高い値を示した(p < 0.05) (図).さらにインスリン濃度においても4週齢と比較して咀嚼群が上昇しており(p < 0.05),咀嚼群が有意に高い値を示した(p < 0.05). 
 GLP-1は食事摂取に伴い小腸から分泌されるインスリン分泌を増幅するホルモンである.その分泌経路は迷走神経が挙げられ,また,咀嚼は自律神経を賦活させることが報告されている.
 これまで我々は咀嚼がインスリン分泌を上昇させること(日本補綴歯科学会第125回学術大会),インスリン分泌細胞であるβ細胞を増加させること(同第126回学術大会),インスリン抵抗性に関わるアディポネクチンに影響を与えたこと(同第133回学術大会)を報告した.GLP-1はインスリン分泌と抵抗性の両方に影響を与えることが報告されている.本研究より,咀嚼による耐糖能への影響のメカニズムとしてGLP-1を介した経路があることが示唆された.