Presentation Information

[課題9]Development of light-cured soft denture liners using antimicrobial rechargeable nanoporous silica.

*Shinichiro Nonoshita1, Sirus Safaee1, Tomoyasu Mori1, Kazuma Takase1, Hiroshi Murata1 (1. Department of Prosthetic Dentistry, Graduate School of Biomedical Sciences, Nagasaki University)
PDF DownloadDownload PDF
【目的】
 超高齢社会を迎え, 顎堤吸収等のため咀嚼時疼痛を有する義歯患者が増加している. このような症例には軟質リライン材が有効である.当研究室では多機能軟質リライン材の開発を目指し, これまで粉末としてエチルメタクリレート ブチルメタクリレート共重合体 (Poly(EMA-BMA)), 液成分にメタクリル酸2-エチルヘキシル (2EHMA)とアセチルクエン酸トリブチル (ATBC) を用い, さらに光重合化させたアクリル系材料が粘弾性と耐久性に優れるとの知見を得た1). 今回, 持続的な抗菌性付与のため, リチャージ可能な抗菌剤含有ナノ多孔質シリカを添加した試作材料の粘弾性と薬剤徐放性を検討した.
【方法】
 粉末にはPoly (EMA-BMA), 液成分のモノマーには2-EHMA, 可塑剤にはATBCを用いた. 2-EHMA: ATBC=75:25 (wt%), 粉液比1.0とした. 光重合型とするため, カンファーキノン, p-ジメチルアミノ安息香酸エチルを少量添加した. 抗菌剤の塩化セチルピリジニウム (CPC) をナノ多孔質シリカ (NPS) に担持させ添加した.
 粘弾性の測定は, 動的粘弾性自動測定器(レオバイブロンDDV-25FP-W, エー・アンド・デイ社) を用いた. 測定は試料作製直後と熱サイクル試験 (5℃と55℃, 1000回) 後に行い, 37℃, 1Hzの粘弾性を比較した. NPS非添加材料をコントロールとした.
 CPC徐放性は紫外可視分光光度計(V-630, 日本分光社) を用い, 吸光度 (259nm) を評価した. 材料を蒸留水に浸漬し, 試作材料とCPC非担持NPS添加材料との吸光度の差を経時的に算出した.
【結果と考察】
 試作材料とコントロール間で粘弾性値に有意差を認めず, さらに熱サイクル試験前後でも有意差が認められなかった (p>0.05, t検定) (図1). 吸光度は21日後でも認められ, CPCの持続的な徐放が確認された (図2). 定期的に軟質リライン義歯を抗菌剤含有溶液に浸漬することでリチャージを目指している.
 以上のことから試作光重合型アクリル系軟質リライン材へのNPS添加が, 物性に影響を与えず, 薬剤徐放性を付与できることが示唆された.
【参考文献】
1) 野々下晋一郎, 森 智康, 吉田和弘ほか. 2-EHMA, i-BMAおよびATBCを用いたアクリル系軟質リライン材の重合様式の違いによる物性の比較. 日補綴会誌2024; 16 (特別号) : 42.