Presentation Information
[P-158]A Case Report of Quality of Life Improvement Through Combined Scar Release Surgery and Maxillofacial Prosthesis in Severe Trismus After Maxillary Cancer Surgery
*Miki Hoshi1, Nobuko Shimazaki1, Hiroaki Sato2, Atsuo Nakanishi1, Kiyotaka Kanemura1, Chikayuki Odaira1, Kazuhiro Kon1 (1. Division of Fixed Prosthodontics and Oral Implantology Department of ProsthodonticsSchool of DentistryIwate Medical University, 2. Division of Removable Prosthodontics and Oral Rehabilitation Department of Prosthodontics School of Dentistry Iwate Medical University)
【緒言】
口腔悪性腫瘍治療後の避けられない後遺障害には形態・機能的に多岐にわたるものがあるが,下顎枝周囲に侵襲が加えられた場合には,とくに開口障害が生じることが多い.今回我々は,上顎癌の三者併用療法により腫瘍は制御し得たものの,高度の開口障害を生じた1例に瘢痕解除術を行った後に顎義歯を装着し,良好な結果を得られたので報告する.
【症例の概要・治療内容】
患者は63歳男性.上顎左側臼歯部の腫脹を主訴に20XX年1月に岩手医科大学附属内丸メディカルセンター口腔外科を紹介受診した.生検の結果は硬口蓋癌(SCC,cT4aN2bM0)であった.治療は化学療法を先行し,腫瘍の縮小を認めたため3月に上顎左側半側切除術が施行された.切除範囲は上顎左側側切歯部から左側第二大臼歯部にわたり,口蓋は正中から顎堤部と一部の頬粘膜まで切除された.退院後は外来通院にて経過観察を続け,欠損周囲の上皮化を待った.この間に徐々に開口制限が増強し開口量は2.8 mmとなり,食物摂取にも支障を生じるようになった.摂食障害のみならず,口腔内不潔によるう蝕発生の可能性,歯科処置の困難などの問題が生じ,さらに,下顎左側臼歯部に骨髄炎も認められた.患者の強い希望もあり7月に下顎左側半側切除術,肩甲骨皮弁+骨頭付き下顎プレート再建術と瘢痕解除術を行い,開口量は術後20 mmまで劇的に改善した.その後,開口訓練を続けるとともに歯科治療に着手し,当院高度先進補綴科顎顔面補綴外来で上顎天蓋開放型顎義歯,下顎顎義歯を製作・装着した.
【経過ならびに考察】
義歯装着1か月後に機能評価を行ったところ,良好な結果が得られた.さらに開口量は28 mmまで改善し患者満足度も高く,現在まで良好な経過を示している.近年,上顎癌に対しては三者併用療法など治療法の進歩により救命率の向上が期待されている.一方で,術後の炎症性瘢痕により高度の開口障害を生じる症例も少なくない.このような症例の場合,開口訓練等の非観血的処置のみによる改善は容易ではなく,観血的処置も視野に入れた包括的な治療計画が必要となる.
本症例では,瘢痕解除術と顎義歯装着の併用により,重度開口障害を呈した患者において,咀嚼機能の回復とQOL向上が得られた.今後は定期的なメインテナンスを継続し,粘膜面形態の経時的変化に対応していく予定である.
口腔悪性腫瘍治療後の避けられない後遺障害には形態・機能的に多岐にわたるものがあるが,下顎枝周囲に侵襲が加えられた場合には,とくに開口障害が生じることが多い.今回我々は,上顎癌の三者併用療法により腫瘍は制御し得たものの,高度の開口障害を生じた1例に瘢痕解除術を行った後に顎義歯を装着し,良好な結果を得られたので報告する.
【症例の概要・治療内容】
患者は63歳男性.上顎左側臼歯部の腫脹を主訴に20XX年1月に岩手医科大学附属内丸メディカルセンター口腔外科を紹介受診した.生検の結果は硬口蓋癌(SCC,cT4aN2bM0)であった.治療は化学療法を先行し,腫瘍の縮小を認めたため3月に上顎左側半側切除術が施行された.切除範囲は上顎左側側切歯部から左側第二大臼歯部にわたり,口蓋は正中から顎堤部と一部の頬粘膜まで切除された.退院後は外来通院にて経過観察を続け,欠損周囲の上皮化を待った.この間に徐々に開口制限が増強し開口量は2.8 mmとなり,食物摂取にも支障を生じるようになった.摂食障害のみならず,口腔内不潔によるう蝕発生の可能性,歯科処置の困難などの問題が生じ,さらに,下顎左側臼歯部に骨髄炎も認められた.患者の強い希望もあり7月に下顎左側半側切除術,肩甲骨皮弁+骨頭付き下顎プレート再建術と瘢痕解除術を行い,開口量は術後20 mmまで劇的に改善した.その後,開口訓練を続けるとともに歯科治療に着手し,当院高度先進補綴科顎顔面補綴外来で上顎天蓋開放型顎義歯,下顎顎義歯を製作・装着した.
【経過ならびに考察】
義歯装着1か月後に機能評価を行ったところ,良好な結果が得られた.さらに開口量は28 mmまで改善し患者満足度も高く,現在まで良好な経過を示している.近年,上顎癌に対しては三者併用療法など治療法の進歩により救命率の向上が期待されている.一方で,術後の炎症性瘢痕により高度の開口障害を生じる症例も少なくない.このような症例の場合,開口訓練等の非観血的処置のみによる改善は容易ではなく,観血的処置も視野に入れた包括的な治療計画が必要となる.
本症例では,瘢痕解除術と顎義歯装着の併用により,重度開口障害を呈した患者において,咀嚼機能の回復とQOL向上が得られた.今後は定期的なメインテナンスを継続し,粘膜面形態の経時的変化に対応していく予定である.
