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[専門医-2]A case report of denture fabrication using duplicated dentures for a patient with multiple missing teeth and severe alveolar ridge resorption

*Bin Li1,2 (1. Institute of Science Tokyo Hospital, Health Science Research and Development Center, 2. Institute of Science Tokyo, Advanced Prosthodontics)
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【緒言】
 高度な顎堤吸収を呈する口腔内では,義歯の安定性を確保することが困難であり,義歯機能時に粘膜疼痛や義歯の脱離を生じやすく,その結果,咀嚼機能障害や審美障害を招きやすい.本症例では,上顎前歯部および下顎臼歯部に高度顎堤吸収を認める症例に対して,上顎に全部床義歯,下顎に残根上義歯を適用した補綴治療を行い,良好な治療結果が得られたため,ここに報告する.
【症例の概要・治療内容】
 78歳,男性(初診時).近医で約5年前に義歯を製作し,調整を続けてきたが,義歯使用時の疼痛が改善しなかったため当科を受診した.43と44のみ残存しており,上顎前歯部および下顎臼歯部の顎堤は高度に吸収していた.また,義歯の著しい不適合と人工歯の咬耗により,閉口時に下顎の右方偏位を認めた.長期間にわたり,不適切な下顎位で咬合していたことを考慮し,治療用義歯を用いて適切な咬合関係および義歯形態を模索した後に,最終義歯を製作する治療計画を立案した. 初診時,43舌側部で下顎義歯が破折しており,顎堤の疼痛を認めたため,義歯の破折部の修理および義歯粘膜面の調整を行った.その後,個人トレーを用いた精密印象採得を行い,咬合床およびゴシックアーチ描記法で顎間関係を決定・確認し,治療用義歯を製作した.装着後は義歯調整を行いながら残存歯のう蝕と歯周病の治療を行い,43と44に根面板を装着した.6か月間良好な経過を確認した後,治療用義歯の形態を反映した複製義歯を用いて印象採得および咬合採得を行った.最終義歯として上顎に全部床義歯,下顎に残根上義歯を製作,装着した.咬合様式はリンガライズドオクルージョンとし,偏心運動の際はバランストクルージョンとした.
【経過ならびに考察】
 最終義歯装着直後から疼痛はなく,2回の軽微な調整のみで,良好な機能回復と患者の満足が得られた.調整完了後は,3か月ごとにメインテナンスを実施しており,3年間にわたり安定した経過を維持している.本症例では,治療用義歯を用いて,下顎位の是正と適切な義歯形態の模索を行った.更に複製義歯を用いて治療用義歯で得られた情報を最終義歯へ反映したため,装着直後から高い適合性と安定性を得ることができたと考えられる.高度顎堤吸収症例では,わずかな咬合接触の変化や義歯粘膜面の不適合が義歯の安定性に大きく影響するため,今後も慎重な経過観察が重要である.