The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Mar 27 - Mar 31, 2021Kyushu University
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
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The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Mar 27 - Mar 31, 2021Kyushu University

[CSS-05]新型コロナウィルスのパンデミックによる飼料供給情勢の変化と今後の展望

〇Akio Takenaka1(1.Japan Scientific Feeds Association)
飼料供給は畜産を支える根幹の部分であり、我が国の畜産における飼料自給率から考えると、海外からの供給体制が大きな部分を占めている。各畜種における情勢については、他の先生方の講演内容を参照していただくとして、全体的な飼料供給体制の変化と今後の展望について概説する。
 まず、配合飼料原料の大部分は輸入トウモロコシや大豆粕であるが、トウモロコシの国際市況は、一時期コロナウィルス蔓延による需要の低下と潤沢な供給量によって安値を付けていたが、昨年の夏以降、中国の積極的な買い付けと南米の天候不順により高値が続いている。今年に入っても、当面は同様の傾向が続くとみられており、特に、中国がASFの影響で一時的に養豚の飼養頭数が一億頭以上減少したが、その影響で豚肉価格が高騰し、生産者の意欲が増大したことから、養豚飼養の大幅な拡大により配合飼料の需要が増大し、配合飼料に使用するトウモロコシが中国内で賄いきれなくなったために北米産を中心とした輸入トウモロコシに依存することになった。一方、大豆粕については、業務や加工向けの油脂需要が低下したことから、日本国内の大豆搾油量の減少が続いており、国産の油粕の供給が低下した結果、輸入大豆粕への依存度が高まっている。大豆粕以外の副原料についても、国内の外食産業の縮小の影響から、飼料用ふすまやグルテンフィードの生産量も減少傾向であり、輸入への依存度が高まっていくものと考えられる。さらに、飼料原料の輸入に関するコスト面では、中国の買い付け増加により輸送費の上昇も予想されている。以上のことから、今後、飼料原料供給情勢は世界的にみても厳しい状況が長引く恐れがあり、国内畜産業においても、その対応が急務となってくる。
 飼料費は、畜種によって異なるものの、国内の畜産業のコストの大きな部分を占めていることから、今後の対策として、私の方から2点ほどの提言をさせていただきたい。一つは、効率の良い家畜の飼養のための飼料給与の精密化である。低タンパクでアミノ酸バランスを考慮した飼料等を用いた過剰な栄養素の給与の削減は、タンパク質飼料の節約と同時に、家畜からの余剰な窒素の排出を抑制することが可能となり、環境負荷の少ない効率的な畜産につながるものである。このようないわゆるスマートフィーディングを行うことによって、飼料給与の無駄をなくしていくことが、飼料費の抑制にもつながるものと考えられる。もう一つは、飼料用米や国産トウモロコシの有効な活用によって、飼料資源の国産化を進めていくことが、飼料穀物等の輸入量の削減につながる。さらに、余剰な食料や食品残渣、製造副産物を活用した、いわゆるエコフィードの有効利用を進めることにより、環境負荷の少ない、効率的な畜産が実現できるものと考えられる。
 以上のような、無駄がなく輸入穀物に頼らない畜産への転換が、我が国の畜産業を守り、さらにその畜産物を通じて安心で安全な食を守っていくことに通じていくものと確信している。