The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 14 - Sep 17, 2022Tokyo University Of Agriculture
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 14 - Sep 17, 2022Tokyo University Of Agriculture

[AW-02]家禽の生殖及び感染防御機能に関する研究の推進と後進の育成

*Yukinori Yoshimura1,2(1. Grad Schl of Integrated Sci for Life, Hiroshima Univ, 2. RCAS, HU)
家禽の健康と安全な卵肉の生産を目指して,生殖機能の内分泌的制御機構,生殖器の感染防御機構,消化管の感染防御機構とその強化,鳥類の内分泌攪乱物質影響評価に関する研究を行った.
① 生殖機能の内分泌的制御機構に関する研究
ニワトリの健全な産卵と受精率に関わる基盤研究として,卵巣と卵管の機能調節機構を追究した.卵胞機能は性腺刺激ホルモンにより調節されるだけでなく,卵胞内局所でプロゲステロン,エストロゲンや卵胞卵子からの情報因子が卵胞閉鎖を抑制することを明らかにし,これらが卵胞の正常な発育に必要であることを示した.また,誘導換羽で産卵を一時的に休止させると,下垂体前葉や卵管細胞がアポトーシスと細胞増殖により新しい細胞に更新されて,産卵と卵形成機能が改善されることを明らかにした.次に,ニワトリ精子が卵管の子宮膣移行部に形成されている精子細管に入ると,精子細管細胞からエクソゾームが放出されるとともに,リノール酸等の脂肪酸が精子に供給されること,また免疫抑制作用があるトランスフォーミング増殖因子βの増加により精子に対する免疫的な攻撃が抑制されることを見出して,これらが卵管内での精子の長期生存を可能にすることを示唆した.これらの研究成果は産卵率や卵質,受精率を改善するうえで貢献すると期待される.
② 生殖器の感染防御機構に関する研究
産卵鶏の生殖器の感染は産卵機能や受精率を低下させ,卵の微生物汚染をもたらすので,これを防ぐために,生殖器の感染防御機構を追究した.卵巣と卵管における免疫担当細胞の分布は性ステロイド依存的に変化し,性成熟期にはエストロゲンの作用で増加して,その後の加齢や休産に伴って減少するという特性を明らかにした.また,卵巣と卵管に,微生物パターン分子認識受容体のToll様受容体(TLR)や炎症性サイトカイン,抗菌ペプチドが発現すること,発現はサルモネラ菌等の菌体成分に応答することを明らかにして,自然免疫による感染防御系も構築されていることを明らかにした.卵管で産生される抗菌ペプチドのトリβ-ディフェンシンは卵の卵殻にも移行することを明らかにし,これが卵内への微生物の侵入を防ぐ可能性があることも示唆した.雄生殖器では,抗精子免疫応答をもたらす可能性が推定される抗体産生細胞の分布は少ないが,細胞性免疫と抗菌ペプチドが機能して感染防御に働くことを明らかにした.これらの研究成果は,生殖免疫機能を強化する技術開発のために貢献すると期待される.
③ 消化管の感染防御機構とその強化に関する研究
適応免疫系が未発達のヒナでは自然免疫系が感染防御に重要な働きをすると考えられる.ヒナ腸管の自然免疫系の特性と,プロバイオティクスによりこの機能を向上させることができるかを追究した.ニワトリ胚とヒナの腸管にはTLR,炎症性サイトカイン,抗菌ペプチドによる自然免疫系が構築されているが,抗菌ペプチドの発現は孵化後に徐々に減少すること,そしてこれらの自然免疫因子の発現は腸内細菌叢の影響を受けるという特性を明らかにした.乳酸菌や酪酸菌等を含むプロバイオティクスを給与すると,腸管のIL-6細胞や細胞傷害性T細胞が増加する傾向があること,一部の自然免疫関連分子の発現は低下するものの,発現が高まる分子が多いことなどを見出した.これらの成果は,プロバイオティクスで,ヒナ腸管の自然免疫による感染防御能を高めることができるという展望を示すものである.
④ 内分泌攪乱化学物質影響評価に関する研究
ニホンウズラのヒナ生殖器の形成異常を指標にして,化学物質の内分泌攪乱作用を評価できることを示し,野性鳥類と家禽の生殖機能を化学物質から守るために貢献する成果をあげた.
 後進の育成では,広島大学の学部と大学院で家畜生体機構学等の畜産学関連授業を担当し,学部卒業論文生50余名,博士課程前期院生31名,博士課程後期院生15名の主指導を行った.多数の大学の非常勤講師を務めたほか,海外からの短期留学生を受け入れて研究指導を行うなど,国内外の他大学学生の育成にも貢献してきた.卒業生・修了生の多くは,企業や協会,公務員,大学や試験研究機関の教員や研究員などとして関連分野で活躍している.
 学会活動では,畜産学会の代議員,理事,機関誌編集委員等として,学会の発展に貢献した.関西畜産学会では学会長として地域の畜産・畜産学の発展に尽力した.日本家禽学会では,編集委員長として機関誌のインパクトファクター取得に尽力し,学会長として学会活動の推進に貢献した.
 社会的貢献については,NPO法人 中国四国農林水産・食品先進技術研究会の理事等として地域の農業・畜産業の発展に貢献した.畜産学教育協議会会長,日本学術会議特任連携会員等として畜産学分野の教育体制の充実と畜産研究の発展に貢献した.