The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 14 - Sep 17, 2022Tokyo University Of Agriculture
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 14 - Sep 17, 2022Tokyo University Of Agriculture

[AW-08]地域飼料資源を活用したサイレージの発酵制御に関する研究

*Zhumei Du1(1. China Agricultral University)
アフリカのような熱帯地域においては、乾季中の飼料不足が、家畜生産を制限する大きな要因となっている。これまでのアフリカ産地域飼料資源調査では、作物副産物の潜在量は膨大であるにも関わらず、サイレージとしての飼料調製による乾季飼料不足問題の解決は上手く行われていないのが実状である。そこで、アフリカ地域飼料資源を活用したサイレージ発酵制御について検討した。 アフリカにおいて作物子実部収穫後の茎葉部は通常、屋外で放置され、反芻家畜にとって飼料が著しく不足する乾季中の粗飼料として利用される。しかし飼料資源の乾燥が、この地域で唯一の保存方法であり、保存期間が長くなるにつれて栄養成分がロスし、その飼料としての栄養価値は低下する。そこで、現地で毎年多量に生産されるソルガムストーバー、トウジンビエストーバー、コーンストーバー、サトウキビトップおよびネピアグラスのサイレージ発酵の影響要因を解析し、乳酸菌やセルラーゼの添加処理により高品質の調製技術を確立した。したがって、これらの農業副産物は家畜の潜在的な飼料資源となり、農産副産物の焼却処理に起因する温暖化ガスの低減をはじめ、熱帯地域において深刻な課題となっている環境保全にも貢献できるばかりでなく、飼料の大半を自然草地に依存するアフリカの放牧型畜産業において、乾期の飼料不足の緩和と家畜生産の向上に期待される。 サブサハラアフリカ南部に位置するモザンビークでは、反芻家畜は自然草地での放牧を主体に、作物残渣の補助的な給与を組み合わせる慣行的方法で飼養されている。しかし、この飼養法では乳牛の栄養要求量を満たさないうえに、低質な粗飼料の給与は乳生産に悪影響を与えている。そこで、モザンビーク産牧草、作物副産物及び配合飼料等、現地で入手できる飼料資源を活用する発酵TMR作成を試みたところ、プラスチックバッグ簡易貯蔵法により良質に調製され、ジャージー種乳牛の栄養要求量を満たした。慣行飼料に比べ、発酵TMRは嗜好性に優れ、その給与によりジャージー種乳牛の採食量及び乾物消化率は改善され、乳量及び収益性も増加した。この発酵TMR調製・給与法は、家畜飼養法の改善により乳牛と肉用牛の生産性を向上させ、地域の畜産振興や人々の豊かな生活の実現に寄与できるものと考えられる。この一連の有用な技術は、現地農家へ社会実装され、アフリカの持続的家畜生産を可能にするものと期待される。 近年、熱帯の発展途上国では、人口の増加と耕作地の減少に伴い、飼料作物・牧草や農業副産物に代表される慣行飼料の供給のみでは反芻動物の飼料需要を満たすことができない。近年、新しい天然飼料資源として、クワ科のコウゾとクワなどの木本植物は注目されている。これらの木本植物は栄養成分が豊富で、さまざまな土壌や気候条件に適応し、バイオマスが高く、熱帯地域で広く分布している。しかし、木本植物は熱帯牧草と同様に、高品質サイレージの調製とは困難である。これらの問題を解決するため、現地で入手可能な各種糠類や作物ストーバーなどの農業副産物を添加し、木本植物の水分調整、発酵基質の補充および乳酸緩衝能の緩和などにより、木本サイレージの発酵品質を改善するための効果的な調製方法を確立した。また、次世代シーケンサー技術を駆使し、サイレージ発酵に関与する微生物のコミュニティーと、共生ネットワークおよび最終代謝産物の生成との複合関係を探究することにより、木本サイレージ発酵メカニズムの解明につながる基礎的で重要な知見を明らかにし、サイレージ発酵の理論に貢献できると考えられた。 以上の一連研究により、地域飼料資源を活用したサイレージ発酵制御技術が開発され、アフリカにおける持続的畜産農業を構築するための基礎および応用研究として貢献するものである。