[IIYS-02]ヤギ雌性化乳房症における性染色体の異常
*Makoto Takeichi1, Midori Tanaka1, Atsushi Kashimura1, Saki Imai1, Toshiaki Inenaga1, Hirokazu Matsumoto1(1. School of Agriculture, Tokai University)
ヒトの女性化乳房症は男性において乳腺組織が肥大する性分化疾患であり, 性の自認を誤らせる要因の一つである.国内外でこれと類似した症状のヤギ雌性化乳房症の発生が報告されているが, その発生機序は明らかにされていない. これまでに我々は次世代シーケンサーを用いた網羅的多型探索により本症の発症機序の解明を試みたが, 既知の性分化異常に関連する遺伝子群では患畜特異的な多型は検出されなかった. 他方で, 患畜ではX染色体上の遺伝子においてヘテロ接合の多型が複数検出された. そこで, 本研究では免疫細胞化学により患畜の性染色体の構成を確認した. その結果, 患畜が雄であるにも関わらず雌特異的な核内構造であるバー小体を持つことが明らかになり, 患畜はX染色体を2本持つことが示唆された. ついで, X染色体上の遺伝子における多型に対して遺伝子型判定を行ったところ, 患畜の余剰なX染色体では非連続的かつ広範な欠失が存在することが示唆された. 以上の結果より, ヤギ雌性化乳房症の発症およびその表現型には余剰なX染色体の存在とその欠失領域が関与すると考えられた. 本研究の成果はヒトで発症原因が不明な女性化乳房症の解明にも繋がることが期待される.
