Presentation Information

[O1-6]ロボット結腸切除におけるCMEへの新たなアプローチ — double bipolar methodの有用性

藤井 善章, 島田 雄太, 加藤 龍太郎, 庭本 涼佑, 中澤 充樹, 上野 修平, 青山 佳永, 今藤 裕之, 廣川 高久, 宮井 博隆, 木村 昌弘 (刈谷豊田総合病院消化器外科)
PDF DownloadDownload PDF
【背景】
ロボット支援大腸切除におけるエネルギーデバイスは、monopolarが一般的であるが、上部消化管領域、肝胆膵領域のロボット手術においては主にdouble bipolar法が使用される傾向にある。double bipolar法は周囲臓器への熱損傷リスクを抑えることができるため、血管周囲の剥離操作においてその効力を発揮する。一方、その使用法を工夫することで膜構造を一層ずつ選択的に切離する操作にも応用可能である。
【目的】
ロボット支援結腸切除におけるdouble bipolar法による手術手技を供覧するとともに、その使用上の工夫と有用性について報告する。
【手術手技と対象】
double bipolar法では、FT10を使用し、設定はマクロモードの70Wとしている。腸間膜授動時には、monopolar使用時と同様に組織にテンションを十分にかけ、bipolarを腸間膜に沿うように接地させ、先端を完全に閉じ切らない程度で連続的に出力することで超音波凝固切開装置と同様の使用感でembryological planeに沿った剥離が可能となる。また、郭清操作においても、多関節機能を駆使し、十分なテンションを加え続けながらSMV前面やSMAのoutermost layerに沿った、連続的な剥離操作が可能となる。さらに、double bipolar法では右手で組織把持が可能となる点や、術野の水分コントロールが困難な症例においても有用である。
我々はこれまでに191例の結腸癌手術(S状結腸切除は除く)を経験し、その短期成績は許容できるものであった。ロボット支援右側結腸癌手術50例の内、double bipolar法を使用した20例(B群)と従来のmonopolar法30例(M群)と比較検討した。後腹膜授動時間中央値はB群で44.5分、M群で42.5分(p値=0.63)、郭清時間(ICAV切離まで)中央値はB群で25.3分、M群で24.5分(p値=0.73)であり有意差は検出できなかった。B群では、GradeⅢ以上の合併症は認めなかった。
【結論】
double bipolar法は、広範囲の腸間膜授動と緻密なリンパ節郭清を必要とする下部消化管領域においても、ロボット手術のメリットを最大限に引き出すことができる。今後のロボット支援大腸切除において、double bipolar法は重要なオプションの1つとなりえる。