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[O10-1]BMI30以上の高度肥満大腸癌症例に対する手術の工夫と周術期成績の解析 -多施設共同後ろ向き研究-
中西 良太1, 安藤 幸滋2, 沖 英次2, 杉山 雅彦3, 上原 英雄4, 藤中 良彦5, 吉田 大輔6, 枝廣 圭太郎7, 川副 徹郎2, 永井 太一朗1, 蓮田 博文1, 田尻 裕匡1, 楠元 英次1, 太田 光彦1, 坂口 善久1 (1.九州医療センター, 2.九州大学消化器・総合外科, 3.九州がんセンター消化管外科, 4.九州中央病院総合外科, 5.飯塚病院外科, 6.別府医療センター消化器外科, 7.錦病院)
【背景】大腸癌手術症例においても高度肥満症例は手術難易度が高い。【目的】肥満症例に対する大腸癌術後短期成績を解析し、手術時の工夫について考察する。【対象・方法】多施設共同後ろ向き研究(関連7施設)。2021~2023年に大腸癌手術症例2503例のうち、術前治療症例、再発症例、緊急手術症例を除いた2186例。BMI≧30を肥満群とし(N=60、うちBMI≧35は17例)、非肥満群(N=2126)と比較した。【結果】背景因子:肥満群は非肥満群と比較して年齢が低かった(中央値:64歳 vs 73歳;P<0.0001)。糖尿病の頻度、結腸/直腸の割合、p-Stage、ASAは両群間で差がなかった。手術因子:肥満群は非肥満群と比較して手術時間が有意に長く(中央値 275分 vs 233分;P=0.003)、出血量も多かった(中央値 50g vs 17g;P=0.003)。術式別の解析では、結腸手術において差が大きく(右側結腸:手術時間中央値 285分 vs 213分;P=0.01、出血量中央値 60g vs 20g;P=0.003、左側結腸:263分 vs 228分;P=0.04、36g vs 14g;P=0.04)、直腸手術では両群間で差を認めなかった(233分 vs 216分;P=0.29、18g vs 19g;P=0.33)。腹腔鏡手術率は同等で(両群88%;P=0.92)、開腹移行率も差がなかった(両群1.6%;P=0.66)。肥満群の開腹移行理由は視野確保困難、手術時間超過であった(直腸癌、手術時間682分、N=1)。肥満群に剥離断端陽性症例は認めなかった。術後短期成績:術後在院日数に差はなく(中央値12日 vs 12日、P=0.81)、Clavien-Dindo Grade≧2の術後合併症の頻度も差はなかった(27% vs 20%;P=0.29)。術後合併症のうち、創部感染(SSI)の頻度は肥満群で有意に高かった(12% vs 4%;P=0.02)。術後補助化学療法の施行頻度も両群間で差がなかった(p-StageIIIのうち62% vs 56%;P=0.86)。【手術の工夫】肥満症例は不十分な視野の中でメルクマルとなる構造物を正確に把握し、適切な剥離層を選択する必要がある。術前画像で腫瘍の局在や血管走行などについて十分に把握することはもちろん、視野の安定化のために微小出血を細かく止血する、間膜は小さく愛護的に把持し牽引による間膜の損傷を避ける、ガーゼを用いて組織を圧排し視野を確保するなどの工夫が必要である。