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[O14-6]切除不能進行再発大腸癌におけるCGPの有用性と限界

奥川 喜永1,2, 北嶋 貴仁1,2, 山下 真司2, 志村 匡信2, 今岡 裕基2, 川村 幹雄2, 安田 裕美2, 大北 喜基2, 吉山 繁幸2, 小林 美奈子2, 大井 正貴2, 問山 裕二2 (1.三重大学病院ゲノム医療部, 2.三重大学大学院医学系研究科消化管・小児外科学講座)
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【目的】包括的がんゲノムプロファイル検査(CGP)が保険適応となり5年が経過したが、その有用性は不透明な点が多く、特に切除不能進行再発大腸癌ではMolecular profileのコンパニオン診断薬(CDx)での評価が普及し、その有用性は限定的な可能性が考慮される。本発表では、当院でCGPを提供した症例の結果をもとに、特に大腸癌におけるその有用性を検討し、今後の展望を議論する。
【方法】当院で2019年12月より2024年6月までに当院で保険診療としてがん遺伝子パネル検査を提供した1311例を対象にその解析結果と予後調査の結果からCGPの有用性を検討した。
【結果】小児38例、成人1273 例に提供し、NCCオンコパネル:219例、FoundationOneCDx:764例、GenMineTOP:12例、FoundationOneLiquidCDx:283例、Gardant360:33例を施行し、対象癌腫は大腸癌が最多で249例(結腸癌157例/直腸癌92例)だった。全体の解析成功率は94.6%で、血液CGPの97.8%に比し、組織CGPは93.6%と有意に低かった(P=0.004)。薬剤選択率は全体では10.6%で、組織CGPが11.5%である一方、血液CGPでは7.9%と低い傾向を認めた(P=0.08)。CGPの結果に基づく薬剤選択の予後改善効果を検討したところ、薬剤選択に寄与した症例は有意に予後良好であった(P<0.0001, Log-rank test)。また大腸癌における解析においても薬剤選択率は13.6%であり、同様に薬剤選択に寄与した症例は有意に予後良好であった(P=0.02, Log-rank test)。特にCDxでRAS/RAF変異型の症例と比較し、RAS/RAF野生型のほうが有意に薬剤選択率は高かった。実際に大腸癌で薬剤選択に寄与した症例の詳細を検討すると、保険診療薬が84.4%(27例)、治験9.4%(3例)、自由診療6.3%(2例)と大半が保険診療内での薬剤選択であり、保険診療薬症例では、組織CGPでCDxと相違しMSIなどがあらたに検出される症例も認めたものの、Liquid CGPでKRAS変異があらたに検出された症例やCDx不十分な症例など、既存CDxを駆使することで検出可能であった症例が17例(63%)と大半だった。
【結論】CGPによる薬剤選択は大腸癌において予後改善に寄与するものの、CDxなどで補完可能なものも多く、CDxとCGPを有効に活用することが重要と考えられた。