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[O16-2]神経障害による排便障害の診断と治療

神山 剛一1, 寺田 俊明1, 田中 良明1, 武田 崇志1, 吉岡 将史1, 増田 有香1, 中村 浩1, 山田 麻子2, 佐藤 兼俊3 (1.寺田病院, 2.アイビー胃腸肛門クリニック, 3.浅草胃腸肛門クリニック)
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脊髄神経障害や脳血管障害による中枢神経障害は,排便に関わる直腸肛門機能を制御する神経に影響し,神経障害による排便障害の病態となる.脊髄障害の場合は,膀胱直腸障害として一般的に認知されているが,馬尾症候群や陰部神経障害などの末梢神経障害が原因の排便障害は,患者が神経障害と排便障害との関連に気づかなかったり,医療者においても診断に至らなかったりするのが現状である.当院の専門外来では直腸肛門機能検査による機能障害の評価を行い,その結果に基づいて排便管理の調整を行なっている.直腸肛門内圧測定または排便造影によって,直腸肛門機能障害による排便障害と診断された338名中,神経障害による排便障害と診断された48名を対象に,神経障害の病態や排便管理についての解析を行なった.48名のうち20名が脊髄損傷なとの脊髄神経障害で,原因不明の神経障害による排便障害も18名おり,診断に至っていない脊柱管狭窄症や馬尾症候群が原因と考えられた.治療としては,当院の排便診療フローチャートに則り,直腸感覚検査の結果に応じて,適切な便意の有無を評価した上で,排便管理を提唱している.すなわち直腸に一定量の便貯留を識別できるかどうかで,自身の便意を指標に排便行動の適否を判断する.直腸感覚が過敏だった場合は,バイオフィードバック療法に直腸における便貯留能の改善を図る.逆に,直腸感覚が低下している場合は,便意が不明瞭となっている可能性を踏まえ,直腸における一定量の便貯留を予測した上で,坐薬や浣腸を用いた排便促進を行う計画排便によって安定した排便周期を確立できた.神経障害による排便障害は,神経障害のタイプによって排便障害の顕性パターンが異なり,それぞれに応じた排便管理が必要となる.ただし,神経障害が原因と認識されていないことも少なくなく,本病態に対する一般医家の理解も必要であると考えられた.