Presentation Information
[O18-1]潰瘍性大腸炎・結腸亜全摘症例における粘液瘻とハルトマン式の比較
鈴木 秀幸, 渡辺 和宏, 唐澤 秀明, 佐藤 好宏, 村上 恵, 小野 智之, 佐藤 将大, 亀井 尚, 大沼 忍, 海野 倫明 (東北大学消化器外科学)
【背景】潰瘍性大腸炎に対する緊急手術では、結腸亜全摘・回腸ストーマ造設術(STC)が選択される場合が多いが、残存直腸の断端の処理方法には、粘液瘻とする方法と、閉鎖してハルトマン式とする方法がある。当科では従来、ほとんどの症例でチューブ粘液瘻とする方法を採用していたが、2021年から、主に術者の術中判断で、症例によってはハルトマン式を選択しており、その割合は徐々に増加している。今回我々は、近年の当科におけるSTC症例をもとに、ハルトマン式を選択する症例の特徴を検討し、粘液瘻とハルトマン式の安全性の比較を行った。
【方法】当科で2021年1月~2025年3月に緊急・準緊急でSTCを施行したUC症例36例につき、診療録に基づいて後方視的に調査した。粘液瘻とした症例(MF群)とハルトマン式とした症例(H群)との間で、患者背景や術後経過などを比較した。
【結果】MF群は23例(全例でチューブ粘液瘻)、H群は13例であった。H群では、年齢およびBMIが有意に高かった(年齢中央値 MF:54歳, H:73歳, p=0.014。BMI中央値 MF:19.0, H:21.3, p=0.024)。また、手術時間がH群で有意に長かった(中央値 MF:213分, H:271分, p=0.023)。Clavien-Dindo Grade 3以上の合併症は、MF群に5例、H群に3例みられ、このうちMF群で粘液瘻として固定した断端近傍の穿孔・腹膜炎で再手術となった症例が1例あった一方、H群では断端に関連した合併症の症例はみられなかった。手術から退院までの日数にも有意な違いはみられなかった(中央値 MF:26日, H:24日, p=0.56)。
【考察】ハルトマン式は、年齢・BMIが高いなどリスクの高い症例や、手術操作が難しく手術時間のかかる症例に選択される場合が多かった。それにもかかわらず、術後経過は粘液瘻の場合と遜色なく、粘液瘻のトラブルを回避するため、症例によってはハルトマン式が望ましい場合があることが示唆された。ただし、どのような症例でハルトマン式を選択すべきかについては、さらなる症例の蓄積・検討が必要である。
【方法】当科で2021年1月~2025年3月に緊急・準緊急でSTCを施行したUC症例36例につき、診療録に基づいて後方視的に調査した。粘液瘻とした症例(MF群)とハルトマン式とした症例(H群)との間で、患者背景や術後経過などを比較した。
【結果】MF群は23例(全例でチューブ粘液瘻)、H群は13例であった。H群では、年齢およびBMIが有意に高かった(年齢中央値 MF:54歳, H:73歳, p=0.014。BMI中央値 MF:19.0, H:21.3, p=0.024)。また、手術時間がH群で有意に長かった(中央値 MF:213分, H:271分, p=0.023)。Clavien-Dindo Grade 3以上の合併症は、MF群に5例、H群に3例みられ、このうちMF群で粘液瘻として固定した断端近傍の穿孔・腹膜炎で再手術となった症例が1例あった一方、H群では断端に関連した合併症の症例はみられなかった。手術から退院までの日数にも有意な違いはみられなかった(中央値 MF:26日, H:24日, p=0.56)。
【考察】ハルトマン式は、年齢・BMIが高いなどリスクの高い症例や、手術操作が難しく手術時間のかかる症例に選択される場合が多かった。それにもかかわらず、術後経過は粘液瘻の場合と遜色なく、粘液瘻のトラブルを回避するため、症例によってはハルトマン式が望ましい場合があることが示唆された。ただし、どのような症例でハルトマン式を選択すべきかについては、さらなる症例の蓄積・検討が必要である。