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[O2-1]直腸粘膜脱に対するMuRAL変法手術の手技と成績

小野 朋二郎, 内海 昌子, 渡部 晃大, 三宅 祐一朗, 久能 英法, 竹中 雄也, 相馬 大人, 安田 潤, 齊藤 徹, 根津 理一郎, 弓場 健義 (大阪中央病院外科)
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直腸粘膜脱とは直腸の最内層である粘膜のみが肛門から脱出する状態を指し,直腸壁全層が脱出する完全直腸脱(full-thickness prolapse)とは別の病態である.多くの場合排便時の過度な怒責による慢性的なストレスにより直腸粘膜を支持する結合組織がゆるみ,粘膜が滑脱することで生じる.滑脱する粘膜が脱肛して違和感や出血,粘液漏出といった症状を生じることに加えて肛門管に粘膜が嵌入することで排便困難や残便感といった排便困難症状を生じることがあり,保存的加療で改善が得られない症例に対して手術療法として余剰な直腸粘膜の切除(Delorme手術,PPHなど)や経腹的な直腸固定術などが報告されている.一方MuRAL(Mucopexy Recto-Anal Lifting)手術はPaganoらが痔核に対する低侵襲手術として2018年に報告した手技であり,痔核上極から口側の直腸粘膜を6~7方向で縦に縫縮する.我々は直腸粘膜脱の症例に対してこのMuRAL手術に準じた手技(MuRAL変法と呼称している)を適応しており,今回その手技と成績について報告する.
Paganoらが報告したMuRAL手術はHemor-Pex System(以下HPS)という専用の筒形肛門鏡を用いるが,これは現在本邦での入手が困難であり,我々はスリットの入った鳥越式の処置用肛門鏡(以下スリット式肛門鏡)を用いている.手術は脊椎麻酔下,Jack-kinife体位で施行する.肛門鏡をまっすぐ挿入して余剰の粘膜を確認し,まず肛門上皮にZ縫合をかけ,そこから口側に向けて5mm程度の間隔で螺旋状に運針していく.滑脱する余剰粘膜を越えると肛門管の方に粘膜が牽引できなくなり,ここで運針を終了し,最初のZ縫合の糸と結紮して粘膜の挙上固定を行う.全周で余剰粘膜を確認して概ね4方向から6方向程度で同様に粘膜を縫縮して全体を挙上固定する.最後にドレナージと減張を兼ねて各々の運針の外側皮膚を切除して手術を終了する.
2021年1月から2024年12月までに直腸粘膜脱に対して上記の手技を適応した67症例を対象として周術期の成績について報告する.