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[O21-6]痔核切除標本で診断された肛門悪性腫瘍の3例

植田 圭祐 (宇治徳洲会病院)
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現在、痔核に対する病理組織標本作製は、保険算定が認められていない。これは「痔核は悪性化しない」という見解に起因している。しかし実際には、臨床的に悪性が疑われなかった痔核切除標本から悪性腫瘍が発見されるケースも存在する。肛門悪性腫瘍は全大腸癌の1%に過ぎない稀な疾患であり、その初期病変はさらに稀有である。当院では、痔核の切除標本は原則として病理検査に提出してきた。2017〜2022年の間、術前に悪性所見がないと評価していた406例のうち、3例で悪性リンパ腫および扁平上皮癌の前癌病変が診断された。これらの3症例を提示し、今後の対応について再考したい。症例は①40代女性②30代男性③30代女性。例のいずれも術前診断は痔核であったが、①②は扁平上皮癌の前癌病変、③は悪性リンパ腫であった。術前の視診や内視鏡では異常は認められず、病理検査によって初めて診断された。患者は比較的若年層であり、早期診断により再発もなく治癒している。現状の制度では、痔核に合併する、あるいは誤診された悪性腫瘍が見逃される可能性がある。少数例であっても、予期せぬ悪性病変を早期に発見する意義は大きく、スクリーニング目的での病理検査提出も許容されるべきと考える。