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[O22-7]大腸癌術後膀胱損傷の1例

中山 洋, 小池 淳一, 浜畑 幸弘, 指山 浩志, 赤木 一成, 安田 卓, 川村 敦子, 赤井 崇, 鈴木 綾, 高野 竜太郎, 城後 友望子, 黒崎 剛史, 堤 修 (辻仲病院柏の葉大腸肛門外科)
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【症例】70歳代女性。併存症として自己免疫性肝炎があり、帝王切開の手術歴があった。便潜血陽性にて施行した大腸内視鏡にて盲腸、S状結腸に大腸癌を認め、腹腔鏡下回盲部切除術、S状結腸切除術を施行した。術後8日目に腹部膨満、炎症所見の著明な上昇、腎機能低下を認め、CTにて腹水貯留を認めた。縫合不全の可能性を考え、抗生剤投与、絶飲食にて経過をみたが、術後14日目には腹水はさらに増加した。腹水試験穿刺し生化学と培養に提出したが、縫合不全は否定的であった。肝不全の可能性も考え、FFPと利尿剤を投与したが改善はなかった。原因不明の術後腹水貯留について文献検索したところ、膀胱損傷による腹水貯留と偽性腎不全の報告を認めた。再度腹水を採取し、腹水中クレアチニンを測定し、膀胱損傷を強く疑った。同日泌尿器科にコンサルトし、膀胱鏡にて診断が確定した。尿道カテーテルを挿入したところ、腹水貯留、腎機能低下は著明に改善した。手術動画を確認したところ、下腹部に癒着があり、これを剥離しており、これが膀胱損傷の原因であった可能性が考えられた。術後27日目に開腹にて膀胱修復術を施行し、その後は経過良好にて退院となった。
【考察】医原性の膀胱損傷は泌尿器科領域や婦人科領域の手術でみられることがあるものの、一般的にその頻度は低い。251例の医原性膀胱損症例のうち、39%が泌尿器科の手術、52%が婦人科の手術、9%が一般外科の手術で認められたとされる文献がある。婦人科手術において,尿路損傷は最も注意すべき合併症の1つであると明記された報告もあるが、消化器外科領域では比較的稀な合併症と考えられる。それだけに今回の症例では腹水貯留の鑑別診断として上がりにくく、診断困難であった。逆に鑑別診断の一つとして挙げることができれば腹水の生化学検査にて容易に診断できるため、常に念頭に置いておくべき合併症と思われた。文献的考察を加え報告する。