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[O22-8]治療に難渋した大腸癌術後の虚血性腸炎の1例

真智 涼介1,2, 山本 大輔1, 久保 陽香1, 竹中 俊介1, 田中 宏幸1, 三田 和芳1, 齊藤 浩志1, 道傳 研太1, 崎村 祐介1, 林 憲吾1, 林 沙貴1, 松井 亮太1, 齋藤 裕人1, 辻 敏克1, 森山 秀樹1, 木下 淳1, 稲木 紀幸1 (1.金沢大学附属病院消化管外科, 2.医療法人社団浅ノ川浅ノ川総合病院)
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症例は60歳、男性。200X年6月に上腹部痛で紹介医を受診した。腹部緊満ありCTで脾弯部結腸に壁肥厚と狭窄を認め、閉塞性結腸癌が疑われた。緊急内視鏡で大腸ステントを留置し、生検で腺癌と診断された。拡張型心筋症による慢性心不全でEF 20%と著明な低心機能状態であり、周術期管理困難のため同年8月に当科紹介となった。精査で脾弯部横行結腸癌cT4aN1bM0 cStageⅢbと診断し、腹腔鏡下結腸部分切除術(D3郭清、FEEA)を行った。腫瘍の栄養血管は副中結腸動脈であり、伴走する静脈含め膵下縁で切離し、中結腸動脈左枝とIMVも切離した。病理学的にはpT4aN2a pStageⅢcであった。経過は良好で術後8日目に退院し、同年10月からCAPOX療法8コースを行った。
翌年12月に下腹部痛と下血、発熱で受診した。CTで左側結腸に壁肥厚あり、内視鏡検査でS状結腸から下行結腸まで全周性の虚血所見を認め、虚血性腸炎と診断した。絶食、補液による入院加療を開始し、血便は入院10日で消失し、腹痛も軽減傾向であったが、発熱とCRP高値は持続し、CTや内視鏡検査でも明確な改善はなく、保存治療を継続した。25日目に脳梗塞、30日目に心不全増悪を発症し、治療を行った。40日目の内視鏡検査でも改善なく、42日目に腹膜刺激症状を伴う腹痛が出現した。CTで遊離ガスを認め、消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎と診断した。著しい低心機能のため手術リスクは非常に高かったが、緊急手術を行った。手術では、腹腔内に便汁の漏出あり、直腸から下行結腸脾弯部まで漿膜が紫~黒色に変化していた。S状結腸の炎症が最も強く、穿孔部も認めた。左側結腸から上部直腸まで切除し、横行結腸ストーマを造設した。病理では特異的変化や悪性像はなく、循環障害に関連した病態と考えられた。術後はICUを経て心不全治療のために循環器内科に転科し、術後44日目(入院86日目)に退院した。
虚血性腸炎は通常、保存的治療で軽快するが、手術を要する症例も存在する。今回、横行結腸癌術後1年3か月で虚血性腸炎を発症し、保存治療が奏功せず、入院後6週経過して穿孔に至った1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。