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[O23-3]原発性乳房外Paget病との鑑別を要したPagetoid spreadを伴う直腸癌の4例

琴畑 洋介, 八重樫 瑞典, 佐々木 教之, 瀬川 武紀, 岩崎 崇文 (岩手医科大学外科学講座)
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【はじめに】悪性腫瘍に伴うPagetoid spread(PS)は原発性乳房外paget病と区別される病態であり、PSを伴う直腸癌は再発のリスクが高く予後は不良であると報告されている。今回、当院で経験した原発性乳房外Paget病との鑑別を要したPSを伴う直腸癌の4例について、文献的考察を加えて報告する。
【症例】当院では2011年から2024年までに、PSを伴った直腸癌と診断された症例は4例で、平均年齢は72歳であった。術前の免疫染色結果は4例全てPSに矛盾しない結果となった。術式は全例で腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術+D3郭清を施行している。4例中3例では皮膚欠損部の修復のため植皮術を併施した。術後の免疫染色はCK20、CDX2は全例で陽性、GCDFP-15は全例で陰性とPSに典型的な結果ではあったが、CK7は4例中3例で陽性だった。術後の転機については1例でリンパ節転移を認め化学療法を継続中であるが、3例は再発なく経過している。
【考察】PSを伴う直腸癌においては5年生存率が54%との報告もあり、手術においてはリンパ節郭清も含めての根治切除が必要となる。今回我々が経験した症例については1例で術後の再発を認めたが、化学療法継続により長期生存を得られている。Paget細胞とPagetoid spread細胞の鑑別には免疫染色が有用と報告されている。アポクリン汗腺・エクリン汗腺に存在するGCDFP-15、および消化管上皮や膀胱上皮のマーカーであるCK20を用いて鑑別を行うことが多い。直腸肛門管腺癌には直腸型腺癌と肛門腺由来癌があり、直腸型腺癌ではCK20+/CK7-、肛門腺および肛門腺由来癌はCK20-/CK7+になりやすいとも報告されている。免疫染色からPSが疑われるが内視鏡的に悪性所見を認めない症例も報告されており、術前診断に苦慮するケースも存在する。
【結語】直腸癌に伴うPSと原発性乳房外Paget病ではその治療法は大きく異なるため、診断は非常に重要であると思われる。