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[O26-4]TaTMEにて肛門温存を行った巨大直腸神経鞘腫の1例

宮坂 衛, 寺村 紘一, 北城 秀司, 大川 裕貴, 関谷 翔, 櫛引 敏寛, 才川 大介, 鈴木 善法, 川原田 陽, 奥芝 俊一 (斗南病院外科)
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【はじめに】神経鞘腫が直腸に発生することは稀であり、腫瘍の部位や大きさによっては手術難易度が高く、肛門温存が困難なこともある.今回、10cm大の巨大直腸神経鞘腫に対し、TaTMEによる切除および肛門温存を行った1例を経験したため報告する.
【症例】30歳女性.妊娠26週の超音波検査で子宮後壁に腫瘤を指摘され、MRIで10cm大の直腸腫瘍を認めた.下部消化管内視鏡では直腸後壁、肛門管上縁に粘膜下腫瘍を認め、生検で神経鞘腫と診断された.帝王切開による出産後に手術予定となり、前医ではAPRの方針であったが、患者が肛門温存を希望し当院を受診した.MRIでは肛門管より足側に直腸背側の腫瘍下端を認めたが、境界明瞭で浸潤性はなく、最小限の切離マージンで肛門温存をし得る可能性が考えられた.術中にAPRへ変更する可能性も考慮しつつ、TaTME併用Lap-ISRを計画した.
【手術】経肛門操作で腫瘍から数mmのマージンを取り粘膜を切開し、腫瘍と筋層の間を剥離した.腫瘍は直腸断端よりさらに背側に及んでいたが、断端を翻転し腫瘍に沿って切除を行い肛門挙筋から剥離し得た.最終的にTaTME併用Lap-ISRを施行した.再建はCircular stapler でSST吻合を行い、経肛門的に16針補強縫合を行った.吻合部は肛門縁から3cmで、ストマは造設しなかった.手術時間は5時間17分、出血量は35mL.術後7日目に食事を開始し、術後12日目に退院となった.排尿障害は認めず、排便は1日10回以下で失禁はなく、患者が許容できる範囲であった.摘出標本の病理診断は130×90×50mmの神経鞘腫で、悪性所見は認めなかった.
【考察】巨大直腸腫瘍の手術は、骨盤内での視野展開が困難で難易度が高く、肛門温存が難しい場合もある.自験例も腹腔操作のみでは肛門側の切除断端の視認が困難と考えられたが、TaTMEにより経肛門的に腫瘍を直視しながら確実な切除が可能となり、肛門温存を達成し得た.また、腹腔操作との2チームによる双方向アプローチは、合併症回避や機能温存に寄与したと考えられる.
【結語】巨大直腸神経鞘腫に対して、TaTMEは肛門温存に対して有用な術式であった.