Presentation Information
[O26-5]直腸癌手術の手技をベースとした腹腔鏡下直腸固定術の経験
伊藤 信一郎, 小野 稔晃, 又野 護, 進 誠也, 岸川 博紀, 岡田 和也 (光晴会病院)
【はじめに】近年、直腸脱に対する腹腔鏡下直腸固定術は広く普及しているが、肛門疾患専門医療機関でなければ、豊富な手術経験を持つ外科医はそれほど多くはない。私自身はこれまで大学病院やその関連施設で下部消化管手術の手術経験を積んできたが、直腸脱手術については十分な経験はなかった。2022年10月より大腸肛門病センターを有する施設での勤務となり、2年半の間に約30例の腹腔鏡下直腸固定術を執刀した。直腸癌手術とは異なる難しさもあり、手術成績および経験した問題点と工夫について報告する。【手術手技】5ポートで手術を施行。岬角で腹膜を切開して直腸固有筋膜を確認し、直腸背側を左右から連続させる。直腸を牽引しながら肛門側に向けて直腸授動進める。神経温存しながら、中直腸動脈は切離し、肛門挙筋のレベルまで授動を進める。8×5cmのメッシュを仙骨に固定し、メッシュは直腸の左右を非吸収糸で3針ずつ固定する。腹膜は連続縫合し、メッシュが露出しないように骨盤底形成を行う。【手術成績】対象は2022年12月から2025年4月に当院で腹腔鏡下直腸固定術を施行した27例。男女比2:25、年齢中央値80。手術時間245分、出血量少量。CDⅡ以上の合併症として、術翌日に骨盤内血種により輸血を要した。【問題点と工夫】①腹膜切離:腹膜が進展するため切離ラインを外側に誤認しやすいため、尿管・神経の確認を丁寧に行う。②剥離層:通常は疎な結合組織となる層が長期脱出と組織のズレにより認識しにくい。③メッシュの固定:タッカーによる仙骨への固定で出血を来しやすいため、骨膜を露出して非吸収糸による縫合固定を行う。④メッシュと直腸の固定:直腸を時計周りにローテーションし、メッシュの右側を直腸壁に、左側を直腸固有筋膜に縫合固定することで、直腸の変形を防ぐ。【まとめ】腹腔鏡下直腸固定術は良性疾患に対する手術であり、手術の安全性について留意しながら手術の工夫を行った。今後は、機能性も考慮しながら手術および術後管理を改善していくことが必要と考えている。