Presentation Information

[O4-1]大腸印環細胞癌における臨床病理学的背景および予後不良因子の検討

辻尾 元1, 田中 佑典1, 塩見 明生1, 眞部 祥一1, 笠井 俊輔1, 小嶋 忠浩1, 井垣 尊弘1, 森 千浩1, 髙嶋 祐助1, 石黒 哲史1, 坂井 義博1, 谷田部 悠介1, 八尾 健太1, 小林 尚樹1, 山本 祥馬1, 大石 琢磨2 (1.静岡県立静岡がんセンター大腸外科, 2.静岡県立静岡がんセンター病理診断科)
PDF DownloadDownload PDF
【背景】大腸癌の大部分は高分化・中分化環状線癌であり、他の組織型、特に印環細胞癌は大腸癌全体の0.2-0.69%程度ときわめてまれである。まれな組織型のためまとまった報告は少なく、臨床病理学的特徴や予後についても不明な点が多い。
【目的】大腸印環細胞癌の臨床病理学的特徴や予後不良因子を解明する。
【対象と方法】2002年9月から2024年12月までに当院で原発性大腸癌に対して原発巣切除を施行した症例のうち、組織に印環細胞癌を含む37例を対象とした。臨床病理学的背景および主な組織型や腫瘍最浸潤部および転移リンパ節における印環細胞の有無、MSI / MMRの状態と予後との関連を検討した。
【結果】腫瘍局在は右側結腸17(46.0%)例、左側結腸4(10.8%)例、直腸16(43.2%)例。最も優勢な組織型として印環細胞癌が腫瘍の1/2以上を占める症例は9(24.3%)例だった。深達度T4bの症例は21(56.8%)例、腫瘍最浸潤部に印環細胞癌を認める症例は27(73.0%)例だった。リンパ節転移を有する症例は28(75.7%)例であり、うち17(60.7%)例で転移リンパ節に印環細胞癌を認めた。リンパ管侵襲は31(83.8%)例に認めた。遠隔転移は4(10.8%)に認め、うち3例は腹膜播種だった。検査を施行した症例のうちMSI-H / dMMRは6(42.9%)例だった。3年全生存率(3Y-OS)は67.2%、3年無再発生存率(3Y-RFS)は52.2%、主な組織型や腫瘍最浸潤部における印環細胞癌の有無と予後の関連は認めなかった(観察機関中央値36か月)。転移リンパ節に印環細胞癌を認める症例では3Y-OS:37.9%、3Y-RFS:23.3%、印環細胞癌を認めない症例では3Y-OS:88.9%、3Y-RFS:66.7%といずれも印環細胞癌を認める症例で有意に予後不良だった。3Y-OSおよび3Y-RFSとMSI / MMRの状態との関連は認めなかったが、 3年癌特異的生存率はMSS / pMMRの症例で25.0%、MSI-H / dMMRの症例で100%とMSI-H / dMMRの症例で有意に予後良好だった。
【考察】大腸印環細胞癌ではリンパ節転移を伴う進行した症例が多く、構成成分として含むだけでも予後は不良である。転移リンパ節に印環細胞癌を含む場合は特に予後が悪い。MSI-H / dMMRは右側結腸原発の症例に認め予後は比較的保たれる可能性がある。