Presentation Information
[O8-5]側方郭清は省略可能か、選択的郭清か:NCRT後直腸癌に対する側方郭清-至適戦略の検討
坂本 純一1, 三浦 啓壽1, 山梨 高広1, 小嶌 慶太1, 横田 和子1, 横井 圭悟1, 田中 俊道1, 佐藤 武郎2, 隈元 雄介3, 比企 直樹4, 内藤 剛1 (1.北里大学医学部下部消化管外科, 2.北里大学医学部付属医学教育研究開発センター医療技術教育研究部門, 3.北里大学医学部一般・小児・肝胆膵外科学, 4.北里大学医学部上部消化管外科学)
【背景】本邦の大腸癌治療ガイドラインでは進行下部直腸癌に対して側方リンパ節郭清(LLND)が推奨されているが, 術前化学放射線療法(NCRT)やtotal neoadjuvant therapyの普及によってLLNDの省略や選択的郭清が広がりつつあり, ガイドラインと実臨床との乖離が課題となっている. 当院では治療前画像で短径7mm以上の側方リンパ節(LLN)腫大を転移陽性と判断し, NCRT施行後にLLNDを施行している。
【目的】NCRT後の下部進行直腸癌に対するLLNDの要否および郭清範囲の違いが予後に与える影響を検討し, その適応と至適郭清を明らかにする.
【対象と方法】2014年1月から2022年12月までに根治切除術を施行したNCRT後の下部進行直腸癌114例を対象とした. NCRTは, 総線量45Gyの分割照射に, S-1及びCPT-11の併用投与を行った. LLN転移陰性例では側方リンパ節を含む小骨盤腔を照射範囲とした. LLN転移陽性例では原発巣及び直腸間膜リンパ節を照射範囲とし, 治療後の縮小に関わらずLLNDを施行した. A群:腫大LLNなしでLLND省略(87例), B群:腫大側のみにLLND施行(15例), C群:両側にLLND施行(12例)の3群に分類し, 治療成績を後方視的に比較検討した.
【結果】観察期間中央値は46.3(14.7–124.7)か月であった. LLND施行例(27例)中, 病理組織学的LLN転移陽性は6例(22.2%)で, 5例がB群に含まれていた. 骨盤内再発は14例(12.3%)に認め, 側方領域が最も多く6例(5.3%), 次いで後方領域5例, 吻合部2例, 前方領域1例の順であった. 周術期合併症率に群間で差を認めなかった. 3年全生存率はA群97.6%, B群93.3%, C群90.9%, 3年無再発生存率はA群71.1%, B群66.0%, C群50.0%で, 有意差は認めなかった(それぞれp=0.91, p=0.383). 一方, A群ではB及びC群と比較して累積骨盤内再発率及び累積側方再発率はいずれも低率であった. B群ではLLND省略側の側方再発を3例(20%)に認め, いずれも全身転移を伴って局所制御困難であった.
【結語】NCRT後のLLN陰性症例に対するLLND省略は、局所制御の観点からも妥当な選択肢と考えられた. 一方, LLN陽性症例においてはLLND省略側での再発を高率に認め, 片側/両側郭清の選択において慎重な判断が求められる.
【目的】NCRT後の下部進行直腸癌に対するLLNDの要否および郭清範囲の違いが予後に与える影響を検討し, その適応と至適郭清を明らかにする.
【対象と方法】2014年1月から2022年12月までに根治切除術を施行したNCRT後の下部進行直腸癌114例を対象とした. NCRTは, 総線量45Gyの分割照射に, S-1及びCPT-11の併用投与を行った. LLN転移陰性例では側方リンパ節を含む小骨盤腔を照射範囲とした. LLN転移陽性例では原発巣及び直腸間膜リンパ節を照射範囲とし, 治療後の縮小に関わらずLLNDを施行した. A群:腫大LLNなしでLLND省略(87例), B群:腫大側のみにLLND施行(15例), C群:両側にLLND施行(12例)の3群に分類し, 治療成績を後方視的に比較検討した.
【結果】観察期間中央値は46.3(14.7–124.7)か月であった. LLND施行例(27例)中, 病理組織学的LLN転移陽性は6例(22.2%)で, 5例がB群に含まれていた. 骨盤内再発は14例(12.3%)に認め, 側方領域が最も多く6例(5.3%), 次いで後方領域5例, 吻合部2例, 前方領域1例の順であった. 周術期合併症率に群間で差を認めなかった. 3年全生存率はA群97.6%, B群93.3%, C群90.9%, 3年無再発生存率はA群71.1%, B群66.0%, C群50.0%で, 有意差は認めなかった(それぞれp=0.91, p=0.383). 一方, A群ではB及びC群と比較して累積骨盤内再発率及び累積側方再発率はいずれも低率であった. B群ではLLND省略側の側方再発を3例(20%)に認め, いずれも全身転移を伴って局所制御困難であった.
【結語】NCRT後のLLN陰性症例に対するLLND省略は、局所制御の観点からも妥当な選択肢と考えられた. 一方, LLN陽性症例においてはLLND省略側での再発を高率に認め, 片側/両側郭清の選択において慎重な判断が求められる.