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[O9-3]直腸癌手術における一時的人工肛門閉鎖の待機期間と短期成績の関連について

石黒 哲史, 田中 佑典, 塩見 明生, 眞部 祥一, 小嶋 忠浩, 笠井 俊輔, 井垣 尊弘, 森 千浩, 髙島 祐助, 坂井 義博, 谷田部 悠介, 辻󠄀尾 元, 横山 希生人, 八尾 健太, 小林 尚輝, 山本 祥馬 (静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
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【はじめに】
直腸癌手術において、一時的人工肛門閉鎖までの待機期間中に腸管粘膜の萎縮が進行し、術後の短期成績に影響を及ぼす可能性が指摘されている。
【目的】
直腸癌手術における一時的人工肛門閉鎖後の待機期間が、術後の短期成績に与える影響を検討する。
【対象と方法】
2021年1月から2024年12月までに当院で一時的回腸人工肛門造設後に人工肛門閉鎖術を施行した症例78例を対象とした。括約筋間直腸切除術は除外した。待機日数の中央値(4か月)を基準に、4か月未満に閉鎖した群をEarly Closure群(EC群)、4か月以上に閉鎖した群をLate Closure群(LC群)とし、両群間で短期成績を比較した。評価項目は、出血量、手術時間、術後在院日数、術後合併症、入院時止痢剤導入率、術後最高排便回数とした。
【結果】
対象はEC群28例、LC群50例であった。年齢、性別、BMI、ASA-PS、初回術式、吻合部の高さ、術前治療に両群間で有意差はなかった。一方、pStage III症例はEC群7例(25.0%)に対しLC群28例(56.0%)と有意に多く(p=0.02)、術後補助化学療法の施行率もEC群1例(3.6%)に対しLC群21例(42.0%)と有意差を認めた(p<0.01)。短期成績では、手術時間、出血量、在院日数、合併症、止痢剤導入率に有意差はなかったが、術後最高排便回数中央値はEC群7.5回に対しLC群12.5回と有意にLC群で多かった(p<0.01)。LARS scoreの項目を参考に、術後最高排便回数が8回以上を頻回排便と定義し、術前治療、術後補助化学療法、吻合部の高さ、ストマ機能不全、待機日数を説明変数として単変量・多変量解析を実施した結果、LC群が頻回排便の独立したリスク因子として選択された(OR 3.50, 95%CI: 1.08–11.34, p=0.04)。
【結語】
一時的人工肛門閉鎖術における待機期間の延長は、術後の排便機能、とくに頻回排便に関連する可能性が示唆された。