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[O9-6]オキサリプラチンを含む大腸癌化学療法が原因と思われる人工肛門静脈瘤出血の1例

和田 英雄, 入江 久世, 赤崎 卓之, 上床 崇吾, 小島 大望, 宮坂 義浩, 渡部 雅人 (福岡大学筑紫病院外科)
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人工肛門静脈瘤は人工肛門造設術後に,門脈圧亢進状態の症例に出現するまれな疾患で,人工肛門からの大量出血があって初めて診断されることが多い。
人工肛門静脈瘤は人工肛門造設術後に,門脈圧亢進状態の症例に出現するまれな疾患で,人工肛門からの大量出血があって初めて診断されることが多い。
今回,我々はオキサリプラチン(L-OHP)を含む化学療法を契機に門脈圧亢進症になったことが原因と思われる人工肛門静脈瘤出血の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
症例は67 歳,男性。アルコール多飲や慢性肝疾患の既往なし。下部直腸癌に対して腹腔鏡下括約筋間直腸切除術を施行された。1年後に骨盤内再発と肝転移再発を認めたため,化学療法が施行された。SOX/bevacizumab(BEV)療法を9 コース施行され病勢は制御されていたが,骨盤内再発巣の感染による肛門痛が増強したため, 化学療法を中断し人工肛門造設術を施行した。 術後に炎症と疼痛の改善があり化学療法を再開したが, 3コースが終了した後にストーマから大量出血があり,救急外来に搬送された。腹部造影CT検査にて人工肛門静脈瘤の出血と診断された。化学療法の開始前と比べて血小板低下、脾臓の腫大、および門脈系血管の腫大が認められており、L-OHP投与に関連した門脈圧亢進症が原因と考えられた。入院後は出血を繰り返したため,輸血と圧迫や縫合による局所的な止血を試みたが効果は一時的であった。静脈瘤塞栓術の適応と判断し経皮経肝静脈塞栓術(PTO:Per-cutaneous transhepatic obliteration)を選択した。PTOは腸間膜静脈造影を施行し、ストーマ静脈瘤につながる側副血行路を確認し塞栓術を行った。その後は造影CT検査にて静脈瘤の改善を認め, 再出血は認められなくなった。退院後に化学療法をIRIS療法に変更してからも再発病巣の病勢制御はできており, 止血処置から6か月が経過した現在まで再出血は認められていない。