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[P14-6]高齢大腸癌患者における腹腔鏡下大腸切除術の安全性の検討

林 伸泰, 三次 悠哉, 大亀 正義, 橋田 真輔, 山本 澄治, 池田 宏国, 佃 和憲 (岡山市立市民病院外科)
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背景:高齢化が進み,高齢大腸癌患者の治療を行うことも多くなった.高齢者は様々な基礎疾患を有することが多く,また臓器予備能も低いことから一旦合併症を併発すると重症化することもあるため,慎重に治療法を検討する必要がある.
目的: 大腸癌患者に対する腹腔鏡下大腸切除術の短期成績を,高齢者群と非高齢者群で比較検討することにより高齢者大腸癌患者における腹腔鏡下大腸切除術の安全性を検討した.
対象と方法:2015年4月~2025年4月に当院と他施設で原発巣切除目的の腹腔鏡下大腸切除術を完遂した計546例を対象とした.80歳以下症例(以下Y群)429例と80歳以上(以下E群)117例の治療成績を後方視的に比較検討した.
結果:E群で有意にASAが高値で女性が多く,BMI値は低く,併存疾患有が多かった.血液検査所見ではE群で有意にAlb値,PNI値が低かった.腫瘍占居部位は両群とも左側が多く占めたが差はなかった. 手術時間,出血量に両群で差はなかった.郭清度,術後経口摂取開始日には差は認めなかった術後せん妄は有意に高齢者群で高かった.Stageは両群間で差はなかったが,術後在院日数中央値はE群19日で,Y群12日と有意にE群で長かった.術後合併症はE群31例(26.4%)で,Y群91例(21.2%)と有意にE群で高かった.両群においてSSIが最多であった.SSIを除く,合併症は有意差を認めなかった.Clavien-Dindo分類Grade 3以上の合併症E群5例(4.3%),Y群16例(3.7%)で差はなかった.再手術(ドレナージ,人工肛門造設)を必要とした縫合不全の発症率はE群で3例(2.7%),Y群7例(1.6%),在院死亡はE群2例(1.7%),Y群3例(0.7%)で差はなかった.
結語:80歳以上の高齢大腸癌患者における腹腔鏡下大腸切除術の術前に高齢群は非高齢群に比べて術前併存疾患を有することが多く,低栄養の傾向であるものの, 術後短期成績の比較から,SSI以外の重篤な合併症に差はなく,非高齢群と同等に安全に施行できることが示唆された.