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[P16-6]75歳以上の後期高齢者大腸癌に対するLynch症候群ユニバーサルスクリーニングの意義と課題

吉岡 貴裕, 中尾 真綾, 森田 哲司, 坂本 真也, 八木 朝彦, 井上 弘章, 三村 直毅, 高田 暢夫, 田渕 幹康, 田村 周大, 上村 直, 大石 一行, 稲田 涼, 徳丸 哲平, 中村 敏夫, 岡林 雄大 (高知医療センター消化器外科・一般外科)
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【背景】
最も頻度の高い遺伝性大腸癌であるLynch症候群(LS)に対し,本邦でも大腸癌全例を対象としたユニバーサルスクリーニング(US)が推奨されている.一方で高齢者を対象と含めるかは未だcontroversialであり,高齢化の進む本邦においては臨床的な課題となる.本検討では75歳以上の後期高齢者に対するUSの意義を検討した.

【方法】
2022年4月以降に当院で切除した大腸腺癌のうちUSの同意が得られた症例を対象とした.MSI検査またはミスマッチ修復タンパク免疫染色(MMR-IHC)を行い,MSI-HまたはMLH1(-)ではBRAF検査を追加した.遺伝性腫瘍外来推奨症例では遺伝カウンセリング(GC)を提供の上,希望者に遺伝学的検査(GT)実施した.75歳以上をA群,75歳未満をB群とした.

【結果/考察】
A群333例,B群409例,合計742例にUSを実施した.A群/B群でそれぞれ年齢81.6/63.6歳,女性169例(50.8%)/153例(37.4%),右側結腸癌142例(42.6%)/97例(37.4%)であった.MSI-HもしくはdMMRは12.6%/6.1%とA群に多かったが,必要症例でBRAF検査追加後の遺伝性腫瘍外来受診推奨例は15例(4.5%)/20例(4.8%)と両群がほぼ同等であった.GC提供例は11例(3.3%)/19例(4.6%)で,それぞれ全例がGTを希望.GT終了例は抄録提出時点で9例(2.7%)/14例(3.4%)であった.LS確定は2例(0.6%)/4例(1.0%)で,原因遺伝子はA群でMSH2とMSH6が1例ずつ,B群でMLH1とMSH6が2例ずつであった.LS確定者の最高齢は90歳であった.メチレーション検査は市中病院では実施困難だが,BRAF検査を追加することで特にA群ではGC対象を絞り込む事ができた.高齢者症例では認知症や併存疾患により古典的スクリーニングの正確な実施は困難な症例も多く含まれる一方,一定頻度でLSが実際に存在していた.

【結語】
後期高齢者に対するLSのユニバーサルスクリーニングはfeasibleと考えられた.