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[P19-5]Double stapling techniqueの際の用手的肛門拡張により生じた肛門裂傷部へimplantさせたと考えられるS状結腸癌肛門管再発の一例

吉村 直生, 花田 圭太, 神崎 友敦, 伊藤 孝, 松下 貴和, 武田 亮二, 加川 隆三郎 (洛和会音羽病院外科)
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はじめに、直腸癌及びS状結腸癌術後の器械吻合部再発を予防する目的で腸管切離前に腸管をクランプし直腸洗浄を行うことは一般的である。Double stapling techniqueによる吻合の際に肛門炎症などで肛門狭窄がある場合は、用手的肛門拡張後に吻合器を挿入せざるを得ないのだが、今回用手的肛門拡張の際に生じた裂傷部のraw areaに局所再発をきたしたと考えられる症例を経験したので報告する。
症例は77歳の男性、便潜血を主訴に大腸内視鏡検査を施行され、S状結腸癌と診断された。腹部造影CT検査及び骨盤MRI検査を施行すると腫瘍は膀胱浸潤をきたしており、泌尿器科にコンサルトし膀胱鏡検査を行った。腫瘍は膀胱三角に浸潤しており膀胱全摘が必要と判断された。
腫瘍も大きく鏡視下での操作が困難と判断し、開腹下にS状結腸切除、膀胱全摘、回腸導管造設術を泌尿器科と合同で施行した。吻合前の直腸洗浄の際、肛門狭窄があり用手的肛門拡張後ネラトンカテーテルを挿入し洗浄した。その後Double stapling techniqueにて吻合した。術後1年で血便を主訴に救急受診され、大腸内視鏡検査を施行したところ、肛門管内にBorrmannⅡ型腫瘍を指摘された。他に遠隔転移はなく、腹会陰式直腸切断術を施行した。切除した標本を確認すると、肛門管に2カ所のBorrmannⅡ型腫瘍を認め、これは明らかに前回手術時の用手的肛門拡張の際にimplantさせ肛門管再発を来したと考えた。DST吻合の際に用手的肛門拡張を行うことは実臨床においてよく遭遇するが、直腸内の遊離がん細胞をすこしでも減少させた直腸洗浄後に行うべきと考える。