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[P19-6]ESD施行部位へのImplantationが疑われた直腸癌術後再発の1例

長谷川 勇太, 帖地 健, 李 俊容, 大橋 真記, 前田 徹, 吉田 卓義, 永井 秀雄, 小西 文雄 (練馬光が丘病院外科)
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大腸進行癌に随伴するポリープに対して進行癌の手術前にESDが施行され、そのESD部位に進行癌からのimplantationによると思われる術後再発を来した症例が少数ではあるが報告されている。
今回我々は、直腸S状部進行癌の肛門側のESD施行部位にimplantationによると推測される術後再発を認めた症例を経験したので報告する。
症例は75歳女性。直腸S状部進行癌の肛門側に存在した直腸早期癌に対して手術前にESDが施行された。この際クリップによる粘膜欠損部の閉鎖は行われなかった。病理所見は、Tis, 断端陰性であった。ESD施行1か月後に、直腸S状部癌に対してロボット支援下直腸高位前方切除術が施行された(手術時間:290分、出血:10ml)。術後経過良好にて経過観察中、術後8カ月時に血便が出現したため、下部消化管内視鏡を施行した。内視鏡では直腸吻合部肛門側のESD瘢痕と合致する部位に約3㎝の2型進行癌を認めた。内視鏡所見からESD施行部位へのimplantationによる再発を疑い、初回手術後9か月に腹腔鏡下直腸低位前方切除術、回腸瘻造設術を施行した(手術時間:379分、出血:20ml)。術後経過は良好であり、術後8か月現在無再発で経過している。切除標本の病理所見では、粘膜下層を主体として増殖する腺癌が認められ、組織像は初回手術で切除された直腸S状部癌に類似するものであった。また、吻合部との連続性は認められなかった。以上の所見は、ESD施行部位へのimplantationによる再発として矛盾しないものと考えられた。
当院では大腸癌術前に、早期大腸癌の可能性が否定できない大腸ポリープの随伴が認められた場合には、切除可能な状況であれば内視鏡的切除を先行して行い、病理診断結果を確認してから主病変の手術を行うという戦略を基本としている。しかし、本症例においてはESDから初回手術までの期間にimplantationを来したことが再発の機序であろうと推測され、本症例の治療戦略が適切であったかは議論の余地があると思われる。本症例および文献上の報告例の分析を行い、大腸進行癌術前の随伴ポリープ内視鏡的切除の適応について検討する。