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[P22-2]進行下部直腸癌に対するneoadjuvant chemoradiotherapyとtotal neoadjuvant therapyの治療成績の比較
坂本 裕生1, 松中 喬之1, 前川 展廣1, 嶋田 通明1, 田海 統之1, 澤井 利次1, 森川 充洋1, 小練 研司1, 玉木 雅人1, 廣野 靖夫2, 五井 孝憲1 (1.福井大学第一外科, 2.福井大学医学部附属病院がん診療推進センター)
大腸癌治療ガイドラインでは,局所再発リスクが高い切除可能な直腸癌症例に対し,neoadjuvant chemoradiotherapy(CRT)を行うことが弱く推奨されている.近年,全身化学療法の施行率向上や遠隔転移抑制を期待し,total neoadjuvant therapy(TNT)の開発が進んでいるが,ガイドラインとしては推奨に至っていない.当科では下部直腸にかかるcT3以深の進行直腸癌を対象にCRT/TNTを適応としており,CRT群ではlong course CRT(1.8Gy×25, S-1併用)後に,TNT群ではInduction chemotherapyとしてCAPOX3コース→long course CRT後に手術施行(手術待機期間に可能な場合はCAPOX3コース追加)を基本としている.またycCR症例では,希望によりNOM(Non-Operative Management)も選択肢としている.2018年から2024年にかけて,16例にCRT,9例にTNTを施行し,両群で患者背景に有意差を認めず,術前治療によるGrade3以上の有害事象も認めなかった.術前治療後の臨床診断では,全例で腫瘍縮小が得られ,縮小率中央値(%)は,CRT群vsTNT群:52(21-63)vs62(14-100)(p=0.35)とTNT群でやや高い傾向であった.またCRT群で10例(62.5%),TNT群で7例(77.8%)にdown-stageが得られ(p=0.66),更にTNT群3例にycCRを認め,NOMを選択されたが,1例(33.3%)に治療終了後7か月で再増大を認めた.手術はCRT群全例,TNT群ではNOM3例を除く6例に実施され,術式,手術時間,出血量に有意差を認めなかった.GradeIII以上の術後合併症は,CRT群でIIIa:3例,IIIb:4例,TNT群でIIIa:2例を認めた(p=1).病理結果では,CRT群で9/16例(56.3%),TNT群で5/6例(83.3%)でdown-stageが得られ(p=0.35),両群1例ずつpCRが得られた(p=0.48).術前治療によるCR(yc+pCR)率は,CRT群で6.3%(1/16例),TNT群で44.4%(4/9例)とTNT群で有意に高かった(p=0.04).CRT群は観察期間中央値28.5(4-68)カ月で,5例(31.3%)に遠隔転移再発を認めた.一方TNT群は観察期間中央値8(2-21)カ月と短期であるが,NOM症例の1例に再増大を認め,その他再発を認めていない.本検討では,TNT群で有意にCR率が高く,術前治療によるGrade3以上の有害事象も認めず,高い有効性と安全性が示唆される.また遠隔転移抑制効果も期待される結果であるが,今後の長期的な観察が必要である.