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[P22-5]局所進行直腸癌に対する術前化学療法と術後補助化学療法の治療成績
斎藤 健一郎, 河野 達彦, 上村 真里奈, 天谷 奨, 高嶋 吉浩, 宗本 義則 (福井県済生会病院外科)
【緒言】直腸癌に対する術前治療として,化学放射線療法が拡がりつつあるが,放射線治療後の手術では術中の浸出液の増加や術後肛門機能低下,会陰創感染のリスク上昇といったデメリットがある.また,放射線治療により局所再発率の低下は期待できるが,OSの改善はみられない.OSを改善させる可能性を追求すると,やはり全身化学療法の必要性が考慮されるが,直腸癌の術後では化学療法が行いにくい症例もある.当科では近年比較的bulkyな直腸癌に対して術前FOLFOXIRI療法を導入しており,その治療成績を報告する.【対象と方法】2022年4月から2025年2月までに当院で術前FOLFOXIRI療法を施行した直腸癌10例(T群)を,2022年4月以前にcT4 or cN2以上で術後XELOX療法を施行した直腸癌20例(D群)と比較検討した.【結果】T群とD群において,cTとcNの腫瘍学的背景に有意差は認めなかった.一方,病理学的にはpT,pNともに有意差には至らないもののT群で改善している傾向を認めた(それぞれp=0.0715,p=0.0668).化学療法の投与期間ではD群が有意に長かった(p=0.0169).有害事象としてはT群で有意に好中球減少が多く(p=0.0003),悪心も多い傾向(p=0.103)を認めた.下痢,倦怠感,末梢神経障害については有意差を認めなかった.無再発生存期間と全生存期間については両群で有意差を認めなかった.【考察】切除可能例における術前化学療法で危惧される問題点として抗腫瘍効果が得られなかった場合に切除不能となるリスクが考えれるが,本研究における10例では悪化を認める症例はなかった.OSの改善を目的とするにあたっては,術後補助化学療法の有効性は確認されているものの,直腸癌の術後症例では,術後合併症などにより化学療法の開始に支障がある症例もあり,術前治療の方が導入しやすい可能性も考えられる.本研究では予後の改善は確認されなかったが,pTとpNは改善の傾向があり,症例数の増加や十分な観察期間によっては結果が変わる可能性もある.【結語】術前FOLFOXIRI療法の有効性はまだ明らかではないものの,今後その治療成績を検証する価値はあるかもしれない.