Presentation Information
[P25-3]直腸悪性腫瘍に対する括約筋間直腸切除術(ISR)の治療成績
大沼 忍, 佐藤 将大, 小野 智之, 村上 恵, 佐藤 好宏, 鈴木 秀幸, 唐澤 秀明, 渡辺 和宏, 水間 正道, 亀井 尚, 海野 倫明 (東北大学消化器外科学)
目的:括約筋間直腸切除術(Intersphincteric resection: ISR)の治療成績を解析し問題点を明らかとする。
対象と方法:2008年9月-2025年4月にISRを施行した60例の手術成績を臨床病理学的に解析した。
結果:症例は男性38例、女性22例、年齢61歳(36-74)、BMI 23.6 (16.8-29.8)、ASA分類 I:II:III = 30:28:2であった。疾患の内訳は直腸癌53例、直腸神経内分泌腫瘍6例、GIST 1例であった。直腸癌の病期はpStage 0:I:II:III:IV = 1:37:1:11:2 例(大腸癌取扱い規約8版,pCR1例除く)であった。手術アプローチは開腹6例(10%)、腹腔鏡26例(43%)、ロボット28例(47%)で、全例に回腸瘻が造設された。周術期因子において、手術時間は、腹腔鏡群で短く、ロボット群で長かった(開腹:腹腔鏡:ロボット = 379:326:463 分、p<0.0001)。出血量は、開腹群に比較し腹腔鏡群、ロボット群で少なかった(開腹:腹腔鏡:ロボット = 502:60:53 ml、p=0.0125)。また、術後在院日数は、開腹群で長くロボット群で短かった(開腹:腹腔鏡:ロボット = 23.5:19:14.5日、p=0.0342)。Clavien-Dindo分類Grade 2以上の周術期合併症を全体の14例 (23%)に認めた。腹腔鏡群では、Grade 2を5例、3aを2例、Grade 3bを1例、ロボット群では、Grade 2を5例、Grade 3bを1例に認めた。縫合不全を3例 (5%)に認め、2例は保存的に治癒し、1例は経肛門的に縫合閉鎖した(術後6ヶ月)。術後3ヶ月未満の1例を除き、59例 (98.3%)で人工肛門は閉鎖された。一方、晩期合併症として直腸膣瘻を1例に、肛門機能不全を4例 (6.7%)に認め、肛門機能不全の全例に人工肛門が再造設された(開腹群2例、腹腔鏡群2例)。4例の人工肛門再造設の時期は、人工肛門閉鎖から6,17,21,52ヶ月後であった。また、ロボット群の1例に、粘膜脱を生じDelorme手術を施行した。再発は、Stage IVの2例を除く直腸癌51例中5例 (9.8%)に認め、再発部位は、局所3例、肺2例、骨1例であった(重複あり)。全体の5年生存率は93.3%であった(他病死2例含)。
結語:ISRの安全性、腫瘍学的予後は許容範囲と考えられた。一方で肛門機能の予後不良例がみられることに留意する必要があると思われた。
対象と方法:2008年9月-2025年4月にISRを施行した60例の手術成績を臨床病理学的に解析した。
結果:症例は男性38例、女性22例、年齢61歳(36-74)、BMI 23.6 (16.8-29.8)、ASA分類 I:II:III = 30:28:2であった。疾患の内訳は直腸癌53例、直腸神経内分泌腫瘍6例、GIST 1例であった。直腸癌の病期はpStage 0:I:II:III:IV = 1:37:1:11:2 例(大腸癌取扱い規約8版,pCR1例除く)であった。手術アプローチは開腹6例(10%)、腹腔鏡26例(43%)、ロボット28例(47%)で、全例に回腸瘻が造設された。周術期因子において、手術時間は、腹腔鏡群で短く、ロボット群で長かった(開腹:腹腔鏡:ロボット = 379:326:463 分、p<0.0001)。出血量は、開腹群に比較し腹腔鏡群、ロボット群で少なかった(開腹:腹腔鏡:ロボット = 502:60:53 ml、p=0.0125)。また、術後在院日数は、開腹群で長くロボット群で短かった(開腹:腹腔鏡:ロボット = 23.5:19:14.5日、p=0.0342)。Clavien-Dindo分類Grade 2以上の周術期合併症を全体の14例 (23%)に認めた。腹腔鏡群では、Grade 2を5例、3aを2例、Grade 3bを1例、ロボット群では、Grade 2を5例、Grade 3bを1例に認めた。縫合不全を3例 (5%)に認め、2例は保存的に治癒し、1例は経肛門的に縫合閉鎖した(術後6ヶ月)。術後3ヶ月未満の1例を除き、59例 (98.3%)で人工肛門は閉鎖された。一方、晩期合併症として直腸膣瘻を1例に、肛門機能不全を4例 (6.7%)に認め、肛門機能不全の全例に人工肛門が再造設された(開腹群2例、腹腔鏡群2例)。4例の人工肛門再造設の時期は、人工肛門閉鎖から6,17,21,52ヶ月後であった。また、ロボット群の1例に、粘膜脱を生じDelorme手術を施行した。再発は、Stage IVの2例を除く直腸癌51例中5例 (9.8%)に認め、再発部位は、局所3例、肺2例、骨1例であった(重複あり)。全体の5年生存率は93.3%であった(他病死2例含)。
結語:ISRの安全性、腫瘍学的予後は許容範囲と考えられた。一方で肛門機能の予後不良例がみられることに留意する必要があると思われた。