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[P26-4]術前イマチニブ投与後に根治切除を施行した直腸GISTの2例

宮内 俊策, 國末 浩範, 松田 直樹, 吉浦 雄飛, 園部 奏生, 谷口 もこ, 高橋 達也, 伊達 慶一, 久保 孝文, 野﨑 功雄, 太田 徹哉 (岡山医療センター)
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症例1は78歳, 女性. 頻尿, 血便を主訴に受診.下部消化管内視鏡で下部直腸に粘膜下腫瘍を認め, EUS-FNAで GISTの診断となった. CTで骨盤内を占拠する最大径11.7 cmの巨大な腫瘍を認め, 直腸を右側へ圧排していた. 骨盤内操作困難や被膜損傷に伴う腫瘍細胞の播種が懸念されたため, イマチニブ400 mg/日の術前投与を開始した. 投与後3ヶ月で皮疹や浮腫などの副作用が出現し, イマチニブを300 mg/日に減量するも継続困難であり約4ヶ月で投与終了となった. 投与後のCTでは最大径9.0 cmで縮小率は約23%であった. 手術は腹腔鏡下直腸切断術+膣後壁合併切除術を行い完全切除可能であった.
症例2は76歳,男性.近医で施行された腹部超音波検査で前立腺背側の腫瘤を指摘され精査目的に紹介受診.下部消化管内視鏡で下部直腸に粘膜下腫瘍を認め,EUS-FNAでGISTと診断された.MRIでは直腸右側に最大径5㎝の腫瘤を認め術前化学療法の方針とした.イマチニブ400 mg/日で投与開始したが投与1か月で浮腫,皮疹,血球減少などの副作用を認めたため300 mg/日に減量して継続した.イマチニブ投与3か月で腫瘤は最大径4.2cmに縮小し,縮小率は約16%であった.手術はロボット支援腹腔鏡下直腸切断術を施行し,完全切除可能であった.
GISTの発生部位として直腸は5-10%と比較的少ないと言われている. GISTに対する治療の原則は外科的切除であるが, 直腸GISTは自覚症状に乏しいことから発見時に既に腫瘍径が大きく, 小骨盤腔を占拠するため切除困難な症例もある. そのような症例に関しては, イマチニブの術前投与によって腫瘍縮小効果が得られることで, 手術侵襲の低減や隣接臓器の温存, 術中播種のリスク低減を図ることができる. 今回, 我々はイマチニブの術前投与を行い, 被膜損傷することなく鏡視下に切除しえた直腸GISTの2例を経験したので文献的考察を加え報告する.