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[P26-5]男性の肛門部乳頭状汗腺腫の一例

瀧山 亜希, 齋藤 晋祐, 磯部 陽 (山王病院消化器センター消化器外科)
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症例は59歳男性。約5年前から肛門部のしこりが気になるとの主訴で2年前に当科初診。5時方向に痔瘻もしくは肛門周囲膿瘍の炎症瘢痕と思われる7mm大の硬結を認め、その他G-II/IIIの内痔核を1個認めた。保存的加療を開始し、改善なければ手術も検討する方針としたが通院を自己中断され、2年後に同様の主訴で再診となった。再診時の所見も2年前と同様であり、また内痔核に関しては排便時に毎回脱出し用手還納を要するようになったため、手術を希望された。
5時方向の硬結は痔瘻と考えてくりぬき法の痔瘻根治術とし、内痔核は結紮切除術を施行。術後経過は特に問題なく翌日退院となった。病理検査では検体内に瘻孔は確認できず、真皮内に境界明瞭な腫瘤が形成されており、分岐する薄い血管結合織を有した円柱上皮細胞の乳頭状増殖を認めた。免疫染色では増殖する円柱上皮の基底部にSMAとp63が陽性の筋上皮が認められ、乳頭状汗腺腫の診断であった。
乳頭状汗腺腫は主に30-60歳代の女性の外陰部に発生する比較的稀な良性腫瘍でありアポクリン腺由来の可能性が報告されている。発生部位は72%が外陰部、14%が肛門周囲、4%が会陰とする海外の報告もある。日本国内の肛門部乳頭状汗腺腫症例を医学中央雑誌にて1958年から2025年4月現在までで検索したところ、女性症例が9例であり、男性の肛門部の発症報告はなかった。典型的な所見がなく痔瘻などの肛門部疾患との鑑別が困難であり、また本腫瘍内に腺癌が発症した報告もあるため診断には注意が必要である。今回非常にまれな男性の肛門部乳頭状汗腺腫の一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。