Presentation Information
[P28-1]BRAF変異・MSI-Hを有し多発転移を認めた進行虫垂癌に対するNivolumabの奏効例
岡本 和也, 前田 裕介, 小橋 創, 髙橋 泰宏, 冨田 大輔, 呉山 由花, 岡崎 直人, 平松 康輔, 福井 雄大, 花岡 裕, 上野 雅資, 戸田 重夫, 黒柳 洋弥 (虎の門病院消化器外科)
【背景】
BRAF変異型は切除不能大腸癌の約5%に認められ, 薬物療法の効果が乏しく予後不良であるが,マイクロサテライト不安定性陽性(MSI-H)患者の場合, 免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待でき, 陰性患者よりも予後が良好とされている。今回, 同時性多発転移を伴う進行虫垂癌に対し原発巣切除後, BRAF変異型, MSI-Hであることが判明し, Nivolumab投与により完全奏効(CR)を得て長期生存中の一例を経験したので報告する。
【症例】
87歳女性。体重減少と皮下腫瘤触知を主訴に受診。 画像精査により皮膚・骨転移, 腹膜播種を伴う全身転移を有する全周性虫垂癌疑いの診断となった。既往に再生不良性貧血, 脳梗塞を有するがPS0であり, 大腸癌の家族歴はなかった。血液検査ではCEA 141.8 ng/mL, CA19-9 12649 ng/mLと腫瘍マーカーは著明に上昇していた。全周性病変でスコープ通過困難であり, 原発巣切除の方針となった。術中所見では, 回盲部に一塊となるbulkyな腫瘍と, 近傍の大網および壁側腹膜への播種を認めた。大網の播種は横行結腸右側への浸潤が疑われたため, そこまでを切除範囲とし, 腹腔鏡下右半結腸切除術を施行した。また, 腫瘍背側では尿管は温存できたが, 卵巣動静脈への浸潤を認めたため, Gerota筋膜と共に合併切除した。病理診断は虫垂癌pT4aN2bM1c(腹膜, 骨, 皮膚, 傍大動脈リンパ節) pStageIVcであり, 組織型はAdenocarcinoma(por1>tub2>muc)であった。術後経過は合併症なく術後11日目に退院した。その後, 化学療法を行う方針となり, 腎機能低下を考慮して, 5-FU/LV +Bevacizumabを1コース施行。病理検査にて, RAS 野生型, BRAF 変異型, MSI-Hと判明したため, 以降Nivolumab 240mg投与を行う方針に切り替えた。治療により著明な腫瘍縮小を認め, 5コース終了時点で画像上CRと判断された。免疫関連有害事象(irAE)の発症はなく, 現在までに39コース施行し, 初回手術施行後4年現在, 無再発生存中である。
BRAF変異型は切除不能大腸癌の約5%に認められ, 薬物療法の効果が乏しく予後不良であるが,マイクロサテライト不安定性陽性(MSI-H)患者の場合, 免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待でき, 陰性患者よりも予後が良好とされている。今回, 同時性多発転移を伴う進行虫垂癌に対し原発巣切除後, BRAF変異型, MSI-Hであることが判明し, Nivolumab投与により完全奏効(CR)を得て長期生存中の一例を経験したので報告する。
【症例】
87歳女性。体重減少と皮下腫瘤触知を主訴に受診。 画像精査により皮膚・骨転移, 腹膜播種を伴う全身転移を有する全周性虫垂癌疑いの診断となった。既往に再生不良性貧血, 脳梗塞を有するがPS0であり, 大腸癌の家族歴はなかった。血液検査ではCEA 141.8 ng/mL, CA19-9 12649 ng/mLと腫瘍マーカーは著明に上昇していた。全周性病変でスコープ通過困難であり, 原発巣切除の方針となった。術中所見では, 回盲部に一塊となるbulkyな腫瘍と, 近傍の大網および壁側腹膜への播種を認めた。大網の播種は横行結腸右側への浸潤が疑われたため, そこまでを切除範囲とし, 腹腔鏡下右半結腸切除術を施行した。また, 腫瘍背側では尿管は温存できたが, 卵巣動静脈への浸潤を認めたため, Gerota筋膜と共に合併切除した。病理診断は虫垂癌pT4aN2bM1c(腹膜, 骨, 皮膚, 傍大動脈リンパ節) pStageIVcであり, 組織型はAdenocarcinoma(por1>tub2>muc)であった。術後経過は合併症なく術後11日目に退院した。その後, 化学療法を行う方針となり, 腎機能低下を考慮して, 5-FU/LV +Bevacizumabを1コース施行。病理検査にて, RAS 野生型, BRAF 変異型, MSI-Hと判明したため, 以降Nivolumab 240mg投与を行う方針に切り替えた。治療により著明な腫瘍縮小を認め, 5コース終了時点で画像上CRと判断された。免疫関連有害事象(irAE)の発症はなく, 現在までに39コース施行し, 初回手術施行後4年現在, 無再発生存中である。