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[P29-3]原発性大腸癌と同時に膵臓癌の大腸転移を認めた極めて稀な1例

上村 真里奈, 髙嶋 吉浩, 長谷川 航大, 小堀 蓮太, 勝山 結慧, 坂口 俊樹, 河野 達彦, 山田 翔, 島田 雅也, 斎藤 健一郎, 寺田 卓郎, 天谷 奨 (福井県済生会病院外科)
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【症例】
症例は80代の男性である.X-1ヶ月から右下腹部痛や便秘,体重減少を認めていた.便潜血陽性の精査で紹介元を受診され注腸透視検査にて大腸癌疑いとなりX日に当院紹介となった.下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に高度狭窄を認め,PET検査では膵尾部癌,上行結腸癌,S状結腸癌,腹膜播種,大動脈周囲リンパ節転移の状態であった.通過障害解除目的に結腸右半切除術,S状結腸切除術,腹膜播種切除術を施行した.病理検査からは上行結腸の2型腫瘍はCK20陽性であり原発性大腸癌と診断された.また上行結腸のSMT様の腫瘍,S状結腸,腹膜播種結節はCK7,CK19の発現が主であり,CK20は陰性であることから膵癌の転移と診断された.体力低下が著明であり,抗癌剤は行わず緩和治療の方針となった.診断,手術から約6ヶ月後に死亡した.
【考察】
膵癌転移は肝臓や肺,リンパ節,腹膜が多いとされており,直接浸潤は胃や大腸に多いとされる.しかしながら膵癌の大腸転移は非常に稀であり報告例は少ない.また膵臓癌の結腸転移患者は一般的に予後が悪く,平均生存期間も平均7か月程度と報告されている.膵癌大腸転移と原発性大腸癌の鑑別にはCK7,CK20の免疫染色検査が用いられる.CKとは上皮組織にみられるケラチン含有中間径フィラメントのたんぱく質であり,上皮細胞におけるCKのサブタイプの発現は特定の上皮の種類に依存する.CK7は一般的に胃上皮や胆膵管上皮由来の癌で発現しており,大腸癌では,ほとんどすべてにCK20が発現している.今回の症例でもCKサブタイプの違いにより大腸癌と膵癌転移の鑑別が可能であった.
【結語】
非常に稀な膵癌大腸転移に加え原発性大腸癌を同時に認めた1例を経験した.診断には免疫染色が有用であった.