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[P29-4]胆嚢癌手術と直腸S状部癌内視鏡的切除の術後5年目に骨盤内腫瘍を認めた1例

岩本 隼輔1, 横溝 肇1, 岡山 幸代1, 川畑 花1, 河野 鉄平1, 加藤 博之2, 塩澤 俊一1 (1.東京女子医科大学附属足立医療センター外科, 2.東京女子医科大学附属足立医療センター検査科)
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内視鏡的に切除された大腸癌において、SM浸潤距離以外のリンパ節転移リスク因子が全て陰性の症例のリンパ節転移率は1.3%とされる。今回、胆嚢癌と直腸S状部癌に対して、同年に施行した拡大胆嚢摘出術とESD施行から5年後に骨盤内腫瘍が出現した1例を経験したので報告する。
症例は85歳女性。2019年に胆嚢癌に対して拡大胆嚢摘出術(胆嚢床切除+リンパ節サンプリング)を施行し、病理組織診断はpap, pat Gnb, intermediate, INFβ, Ly0, V0, Pn0, pT2(SS), pPV0, pA0, pCM0, pEM0で、リンパ節サンプリングは全て(#12b1, 12b2, 12c, 12p, 12h)転移陰性であった。同年、直腸S状部癌に対してESDを施行し、病理組織診断はpap>tub2, pT1b(SM9000µm), BD1, Ly0, V0, HM0, VH0, R0であった。直腸S状部癌については患者が追加切除を希望せず、経過観察としていた。2024年にCEA 2.3ng/mL、CA19-9 37.1U/mL、抗p53抗体 385.7U/mLと一部腫瘍マーカーの上昇がみられ、CT検査で直腸S状部の腸管壁に近接する骨盤内腫瘍を疑う結節病変が出現した。下部消化管内視鏡検査では再発所見はなく、PET-CT検査では同部に異常集積がみられたことより癌の転移が疑われ、切除の方針とした。術中所見で直腸間膜内に腫瘤を触知したため、高位前方切除術を施行した。病理組織診断では直腸壁に付着する直腸S状部癌のリンパ節転移(adenocarcinoma)との結果であった。
SM浸潤距離以外のリンパ節転移リスク因子が陰性であったものの、切除後5年目にリンパ節転移が顕在化した1例を経験した。このような症例では、少なくとも5年以上のサーベイランスを行う必要性が示唆された。また,SM浸潤度が2000μm以深の場合にはリンパ節転移率が11%とされており、追加腸切除を行うか否かについてはより慎重に判断すべきであったと考えられた。