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[P29-5]直腸癌との鑑別が困難であった前立腺癌直腸転移の1例
河野 眞吾1, 細山田 融祐1, 白川 峻佑1, 伊藤 謙1, 山本 剛史1, 川満 健太郎1, 行田 悠1, 野呂 拓史1, 渡野邉 郁雄1, 町田 理夫1, 三好 悠斗2, 武藤 智2, 高橋 奈苗3, 岡野 奈緒子3, 小倉 加奈子4, 須郷 広之1 (1.順天堂練馬病院総合外科, 2.順天堂練馬病院泌尿器科, 3.順天堂練馬病院放射線科, 4.順天堂練馬病院病理診断科)
【背景】転移性直腸癌は比較的まれな疾患であり、その原発巣として最も多いのは胃癌であり、それについで子宮癌、卵巣癌が多く、前立腺癌からの転移はまれである。また、前立腺癌の転移部位としても頻度が高いのは、リンパ節、骨、肝臓、肺などであり、直腸への浸潤、転移はまれである。今回われわれは、直腸に全周性狭窄をきたした直腸癌との鑑別が困難であった前立腺癌直腸転移の症例を経験したので報告する。【症例】80歳代の男性。半年前からの便通異常を認め、前医の下部消化管内視鏡検査でAV 4cmから全周性の狭窄を認め、生検の結果、adenocarcinoma (por2, tub2)を認め、進行直腸癌の診断で当院へ紹介となった。また同時期に頻尿を認めたため、近医で精査の結果、前立腺は40mlと肥大を認め、PSAも72.1ng/mlと高値であった。直腸全周性狭窄による閉塞症状認めたため、人工肛門造設術施行した。その後、前立腺生検を施行し、前立腺癌の診断に至った。CTでは大動脈リンパ節腫大や左骨盤リンパ節腫大を認め、PET-CTでも同部位にFDGの集積を認めた。重複癌の可能性もあったが、同じ癌の可能性も否定できなく、直腸の生検検体に免疫染色を追加し、再診断することとした。直腸生検材料からもPASとAMACRが強陽性を示し、CK20、CDX-2は陰性であった。そのため、直腸の全周性狭窄は前立腺癌からの転移の診断となった。年齢も考慮し、ホルモン療法が施行されることとなった。現在、ホルモン療法開始から3か月経過したが、PSA 5.42ng/mlと改善を認めている。【結語】今回われわれは、直腸に全周性狭窄をきたした直腸癌との鑑別が困難であった前立腺癌直腸転移の症例を経験したので、文献的な考察を加えて報告する。