[P31] 一般演題（ポスター） 31 側方リンパ節

[P31-1] 当教室における側方リンパ節腫大を伴う進行直腸癌の治療成績

庫本 達, 濱元 宏喜, 有馬 純, 北田 和也, 島 卓史, 高野 義章, 朝隈 光弘, 富山 英紀, 李 相雄 (大阪医科薬科大学一般消化器外科)

【背景】
2024年版の大腸癌治療ガイドラインでは、下部直腸癌に対する予防的側方郭清は「弱く推奨」とされているが、側方リンパ節が腫大した症例に対してどのような術前治療が適切かは明らかでない。当教室では2009年以降、局所進行直腸癌に対し、術前化学放射線療法（CRT）または術前化学療法（NAC）を行ってきた。特に、術前に10mm以上の側方リンパ節腫大が認められた場合には、側方郭清を追加してきた。
【目的】
当院でCRTまたはNACを術前に施行した進行直腸癌のうち、側方リンパ節腫大（10mm以上）を認めた症例について、短期および長期の治療成績を比較検討する。
【対象と方法】
2009年1月から2019年12月までに、当院で直腸癌に対して術前治療後に手術を行った278例のうち、側方郭清を実施した43例を対象とした。CRT群21例、NAC群22例に分け、短期および長期の成績を後方視的に比較した。
【結果】
年齢、性別、BMI、腫瘍の位置、cTステージ、治療前CEAなどの背景因子は両群でほぼ同等であった。短期成績では、術式、手術時間、出血量、術後入院期間に差はなかった。Clavien-Dindo分類Grade3以上の術後合併症はCRT群で4例、NAC群で3例（p=0.5804）、腹腔内感染はそれぞれ3例vs4例（p=0.7289）と、いずれも有意差はなかった。病理評価でもypTステージ（p=0.5498）、R0切除率（18例vs19例、p=0.6327）は同程度だったが、組織学的効果がGrade2以上の割合はCRT群で有意に高かった（12例vs5例、p=0.026）。
長期成績では、5年全生存率（94.12% vs 89.72%、p=0.6208）、5年無再発生存率（56.3% vs 57.14%、p=0.8508）、5年遠隔無再発生存率（70.59% vs 61.22%、p=0.7586）は両群で有意差はなかったが、5年局所無再発生存率はCRT群の方が良好な傾向を示した（90% vs 66.67%、p=0.0763）。
【結語】
側方リンパ節腫大を伴う直腸癌において、CRTはNACと比較して局所制御において有効である可能性が示唆された。一方で、遠隔転移を含めた無再発生存率は両群で同等であった。