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[P33-1]当院における臍部一時的人工肛門造設術の検討

藤井 能嗣, 芥田 壮平, 林 久志, 西 雄介, 中西 彬人, 皆川 結明, 石山 泰寛, 椙田 浩文, 平沼 知加志, 平能 康充 (埼玉医科大学国際医療センター)
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はじめに: 直腸癌術後における縫合不全は重篤な合併症であり、そのリスクを軽減する目的で、一時的回腸ストーマの造設が広く行われている。従来、このストーマは右側腹部に造設されてきたが、近年では、整容性の向上および創部数の削減を目的として、臍部を利用する手法が注目されている。しかし、臍部ストーマの術後成績についての報告は少なく、その安全性や有用性は明らかではない。本研究では、腹腔鏡下直腸切除術後に造設された臍部ストーマ(U群)と従来の右側腹部ストーマ(C群)について、術後短期成績を比較検討することを目的とした。
方法: 2018年1月から2022年4月までに当院で腹腔鏡下直腸切除術と一時的回腸ストーマ造設を受けた患者144例を対象とし、U群とC群に分類した。共変量として、性別、年齢、BMI、ASA分類、糖尿病およびステロイド使用の有無を設定し、傾向スコアマッチングを用いて、各群35例を抽出し、術後成績を比較検討した。
結果: マッチング後の両群間において、患者背景に有意差は認められなかった。術後合併症率、ストーマ関連皮膚障害の発生率、またoutlet obstructionの頻度についても有意差はみられなかった。さらに、ストーマ閉鎖術後における合併症の発生率についても群間で有意差はなかった。一方で、ストーマ閉鎖術における手術時間はU群で有意に延長していた(63分 vs 55分, p=0.004)。
考察: 本研究では、臍部ストーマは創部数の削減や整容性の観点から有用であり、従来のストーマと比較して短期的な成績において大きな劣性は認められなかった。特に、ストーマ関連合併症である皮膚障害やたoutlet obstructionの発生頻度に差がなく、安全性が示唆された。今後は、長期的な観察を通じて、ヘルニアなどの晩期合併症に関する検討が必要である。