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[P33-5]人工肛門閉鎖部に対する局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)と遅延一次縫合を組み合わせた創閉鎖手技と短期成績

波江野 真大, 梅田 一生, 家根 由典, 村上 克弘, 吉岡 康多, 大東 弘治, 所 忠男, 上田 和毅, 川村 純一郎 (近畿大学医学部外科)
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【背景】
人工肛門閉鎖術後における代表的な合併症のひとつに、手術部位感染(surgical site infection: SSI)がある。これまでSSI対策として、環状皮膚縫合による創閉鎖が有効とされてきたが、肉芽形成および上皮化に一定の期間を要し、創治癒に至るまで継続的な処置や通院が必要となる点が課題であった。近年、局所陰圧洗浄療法(negative pressure wound therapy with instillation and dwell time: NPWTi-d)が開発され、SSI抑制および肉芽増生促進効果が期待されている。当施設では、自己処置や通院継続が困難と考えられる症例に対し、術後SSI発生抑制および創治癒期間短縮を目的として、NPWTi-dと遅延一次縫合を併用した創管理を導入している。今回、本手技と短期成績について報告する。
【方法】
2018年12月以降に当施設で人工肛門閉鎖術を施行した120例のうち、NPWTi-dと遅延一次縫合を併用した9例を対象とし、その短期成績を後方視的に検討した。
【手技】
人工肛門閉鎖部に対し、頭尾側方向に紡錘状の皮膚切開を加える。腸管吻合完了後、腹膜・筋膜を閉鎖した後、生理食塩水1500 mLにて創内を洗浄し、皮下組織および皮膚は開放創のまま手術を終了する。術翌日よりNPWTi-dを開始し、術後3日目にフォームを除去する。不良肉芽や血流障害を認めず、創部の筋膜および縫合糸が肉芽により覆われていることを確認できればNPWTi-dを終了する。同時に真皮埋没縫合による遅延一次縫合を施行し、創閉鎖を行う。創部に感染兆候がなく、皮膚接着が完了したことを確認して創治癒と判断する。
【結果】
対象は男性8例、女性1例で、年齢の中央値は70歳(44〜75歳)であった。全例が回腸人工肛門閉鎖術症例であり、肥満(BMI > 30 kg/m²)1例、糖尿病合併3例、化学療法施行後を4例含んでいた。全例で術後SSIの発生は認めなかった。術後在院日数の中央値は9日(7〜14日)、創治癒確認までの期間の中央値は11日(8〜16日)であった。
【結語】
人工肛門閉鎖部に対するNPWTi-dと遅延一次縫合を併用した創管理は、術後SSIの発生率軽減に寄与し、さらに在院日数および創治癒期間の短縮が期待される有用な治療法であると考えられる。