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[P35-5]潰瘍性大腸炎関連colitis-associated colon cancerにおける免疫抑制性Bリンパ球サブセットの解析
小佐井 孝彰, 岩本 千佳, 吉村 晴香, 藤本 崇聡, 田村 公二, 永吉 絹子, 水内 祐介, 仲田 興平, 大内田 研宙, 中村 雅史 (九州大学大学院医学研究院臨床腫瘍外科)
【背景・目的】潰瘍性大腸炎(UC)は長期にわたる慢性炎症を背景として潰瘍性大腸炎関連大腸癌(UC-CAC)が発生するリスクが高いことが知られている。CACはしばしば組織学的悪性度の高く、予後不良であり、確立された治療法は大腸全摘術以外に存在しないのが現状である。近年、固形癌における腫瘍浸潤性Βリンパ球が腫瘍微小環境において二面的な機能を有することが報告されているが、UC-CACにおける炎症環境下での腫瘍浸潤性Βリンパ球の意義は未だ明らかでない。そこで本研究ではシングルセル遺伝子発現解析および空間トランスクリプトーム解析を用いてUC-CACにおける腫瘍浸潤性Βリンパ球のheterogenityを1細胞レベルで明らかにすることを目的とした。【対象と方法】2021年6月から2024年8月までに当院で手術施行したUC-CAC5症例13サンプル(癌部・炎症部・正常部)に対してscRNA-seq解析を行った。また対応するFFPE標本5症例6サンプルに対してXenium in situ解析を行い、位置情報を含めたRNA発現や機能関連遺伝子群の比較検討を行った。【結果】scRNA-seq解析でCD79AをBリンパ球マーカーとしてBリンパ球集団を抽出した。正常部と比較し癌部において、B細胞・形質細胞いずれも割合が増加していた。またB細胞・形質細胞全体では抗体産生関連signature score高値(p< 0.0001)、胚中心Β細胞関連signature score低値(p< 0.0001)を認めた。また抑制性Fc受容体(FCGR2B)、IL10、TGFB1の発現上昇を伴うB細胞サブセットを認め、免疫チェックポイント分子(PD1)の発現上昇及びCD27・IGHD陰性を特徴としていた。またXenium in situ解析でも類似した遺伝子発現をもつ免疫抑制性B細胞サブセットを同定し、それらは腫瘍近傍のリンパ球集簇に局在する傾向を認めた。【結論】本研究ではUC-CACにおける腫瘍浸潤性B細胞の亜集団として、免疫抑制性遺伝子発現を特徴とするBリンパ球サブセットを同定した。これらの細胞集団は、UC-CACの免疫抑制性の腫瘍微小環境の形成に寄与している可能性が示唆された。